突然、「休職を要する」診断書が出た、さてどうする?

「休職を要する」診断書が出てきた際の会社対応と注意点

突然従業員から「休職を要する」と診断書が提出されたら、どうされますか?不調者を事前に把握しており、従業員と相談した上で休職に入る場合は、会社対応は取りやすいでしょう。しかし、突然「休職を要する」との診断書を渡された郵送で送られてきたなど、予測できない不調者対応が起こることもあります。その際は適切かつスピーディーな対応が求められます。そもそも、休職制度とは労働基準法では定められていません。そのため、会社が休職制度を導入したい場合は、就業規則で休職制度と詳細なルールについて定める必要があります。まずは、会社が「休職制度の有無」や「休職に関するルール」について、就業規則で定めているか確認をしましょう。

この記事では、就業規則に休職制度が定められているという前提で、「休職を要する」との診断書が出された際の会社対応と注意点について説明していきます。

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この記事でわかること(目次)
  • 「休職を要する」診断書が出てきた際の会社対応と注意点
  • 診断書が提出されたときによくある5つのNG対応
  • 診断書提出の翌日から休職が原則
  • まとめ
  • 休職者対応に役立つ資料をご用意しています
  • 休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    診断書が提出されたときによくある5つのNG対応

    「休職を要する」という医師からの診断書は、「これ以上働かせたら心身の健康障害が起きうる」という重要なエビデンスです。もし会社が自己判断で適切な対応をとらなかった場合、会社責任(労働契約法第5条_安全配慮義務)を問われる可能性もあります。安全配慮義務を怠った場合、多額の賠償を命じる判例が多くあることから、安全配慮義務違反とみなされないためにも、適切な会社対応が求められます。では、診断書が提出されたときに起こりがちなNG対応をみていきましょう。

    NG対応その1 休職させない

    会社や現場管理職の判断で休職させない、という対応はNGです。例えば、下記のような場合、現場としては休職させることを悩むのではないでしょうか。

    ・診断書を出してきたが、客観的にみると元気そう
    ・現場は人手不足で、あと1か月でいいので何とか頑張ってもらいたい
    ・特定の技術を持っており、その人じゃないと対応できないので困る

    しかし、どのような状況でも、休職を要するとの診断書が出た場合は、必ず休職をさせる必要があります。万が一、通勤時や勤務中に事故があった場合、会社は医師から診断書が出ているのを知っていた(不調を把握していた)にもかかわらず出勤させていたと見做され、会社責任(安全配慮義務)を問われる可能性があります。そのため、どのような事情があったとしても「休職を要する」という医師の指示には従いましょう

    NG対応その2 引継ぎのために何日か出社してもらう

    引継ぎのために、数時間や数日だけでも出社をしてもらう、という対応はどうでしょうか。事情はわかりますが、基本的にはNGです。例えば、業務が属人的になっており、休職予定従業員がいないと業務が回らない、といった場合です。この場合、本人が引継ぎのための出社に同意をしていたとしても、理想は出社させずに診断書に従って休職してもらう必要があります。理由としては、NG対応①同様何かあった際に、会社責任を問われる可能性があるためです。また、職場における人間関係がストレス源となりメンタル不調となった従業員の場合、引継ぎ中にその社員と遭遇したことによるトラブルの発生や、メンタル不調の悪化が起こる可能性もゼロではありません。診断書に医師から休職開始日について特別な記載がない限り、診断書が提出された翌日から休職してもらうことが望ましいです。

    NG対応その3 診断書を現場でそのまま保管

    診断書を現場で保管したまま放置、といった対応もNGです。診断書は要配慮個人情報を含む機微な情報であり、かつ労務管理において疾病の事実を証明する重要な文書となります。現場に対しては、診断書が提出されたら必ず人事へ提出するよう指導をし、人事管理で保管するようにしましょう。また、現場判断で休職させないといった対応が起こらないよう、会社がマネージャー層へ教育をすることも重要です。教育の方法としては、ラインケア教育が該当します。メンタル不調が疑われる部下とのコミュニケーション方法や、診断書が提出された後の管理職の対応(診断書の取扱い・休職者への連絡に関する注意点など)を教育しておくことは、現場での判断によるトラブル防止にもつながることが期待できます。

    NG対応その4 体調が悪いのに無理やり面談を受けさせる

    体調が悪いと知っているにも関わらず、産業医面談を受けさせるための出社や、オンライン対応を強要するのはNG対応の1つです。確かに、会社としては休職の理由や経緯を聞いておきたいところですし、産業医に状態を確認してもらいたいという動機があります。しかし、NG対応①、②同様、面談で心身の不調が悪化した場合や、何かトラブルがあった際には会社責任を問われる可能性があります。そのため、休職理由などは本人が話せるタイミングを待って確認する、若しくは、復職判定面談時に産業医に確認してもらうという方法がよいでしょう。診断書が出たら、療養に専念することを優先させます。

    NG対応その5 休職理由を根ほり葉ほり聞く

    メンタル状態が悪化している従業員は、思考能力が低下していることで、考えがうまく回らない、情報が通常のように処理できない、といった状態になっていることが多くあります。そのため、休職理由を確認しても、本人もよくわからない状態や、うまく話せないことがあります。会社が休職理由を根ほり葉ほりきくことで、メンタル状態が悪化する可能性もあるため、タイミングを待って確認しましょう。

    診断書提出の翌日から休職が原則

    医師の診断書に休職の開始日の記載がない場合は、基本的に提出された翌日から休職に入ってもらいます。理由は、休職を要すると診断が提出されたにも関わらず働かせていて従業員の心身に何か起こった際は会社責任を問われる可能性があるからです。

    では、診断書に休職開始日の記載がされるケースはあるのでしょうか。

    メンタル不調による休職診断書が提出される時、主にふたつのルートがあります。

    1)従業員自らが主治医から診断書をもらい提出するケース
    2)会社として休職の判断を行ったうえでそれを本人へ伝え休職の診断書を提出してもらうケース

    2)のケースは具体的には、産業医面談もしくは人事面談でこれ以上業務遂行させることが危険と判断されたため会社として休職させる方針となり、本人に休職に入るための診断書を貰う目的で医療機関を受診してもらうことが該当します。この時、業務状況などに応じて、休職開始日は会社と本人が相談のうえ決めることがあります。そして、本人が主治医へ休職開始希望日を伝え、主治医が問題ないと判断した場合は、希望の開始日から休職となります。

    1)のケースでも、本人が主治医へ休職開始日を伝えた場合、主治医の判断で開始日が記載されることもあります。

    いずれにしても、あくまで休職開始希望日は主治医が問題ないと判断した場合のみ記載されるので、特別な記載がない限りは、診断書提出の翌日が休職開始日と捉えましょう。

    もし時期の指定があった場合は?

    医師の診断書に開始日の指定があった場合は、指定されている日から休職となります。例えば、6月1日に診断書を受領、療養開始日は6月5日となっていたら、6月1日~6月4日は出社し引継ぎ業務などを行うことは問題ありません。ただし、メンタル不調者の場合、診断書が出たことで、張っていた糸が切れるように状態が更に悪化する従業員もいるため、引継ぎ期間の体調変化には気を配る必要があります。

    休職中の連絡はあり?なし?

    休職中の連絡は可能ではありますが、「いつ」「誰が誰に行うか」に注意が必要です。休職中も、従業員と会社との間に労働契約は存在しているため、会社は休職者の状況を把握する必要があります。具体的な休職中の連絡方法・注意点について確認しましょう。

    大前提:業務に関することは話さない

    特にメンタル不調者の場合は、業務と切り離して療養に専念をすることが重要です。従業員から業務状況を聞かれたとしても、安心して療養に専念できるよう配慮します。

    回数:目安は月1~2回とすることが多い

    連絡の頻度が多い場合、従業員の負担となり療養に専念できなくなる可能性があります。目安は月1回程度をお勧めします。新卒など、若い世代で孤立が心配な従業員は月2回程度でも構いません。どのくらいの頻度が適切なのか迷う場合は、産業医へ相談することも一案となります。

    誰が:休職者から人事担当者へ連絡

    まず、休職期間中は業務と切り離すことが重要ですので、上司や同僚が連絡することは避けましょう。 また、連絡は休職者から連絡窓口となる人事担当者へ連絡してもらいます。連絡する窓口が多いと混乱をきたすことがあります。そのため、窓口となる人事担当者は1人に絞っておくこともポイントです。

    いつ:連絡日は従業員と相談して決めましょう

    月1回のスケジュールの決め方としては2パターンあります。1つ目は、事前に曜日を固定しておく方法です。例えば、第3水曜午後〇時など事前に固定しておくと忘れにくく、また調整する手間が省けます。2つ目は、その都度相談して決める方法です。連絡したら次の連絡日を相談して決定する方法です。

    どのように:電話

    連絡の取り方は電話がお勧めです。電話では声や話し方から体調に関する情報が得られます。Web面談の方が直接表情を見ることができて、いいのでは?と思うかもしれませんが、本調子ではない休職者にとっては、顔を見て話すことは負担となることがあります。またメールだと状態がわかりづらいことから、電話がよいでしょう。

    何を:本人の体調などをメインに確認

    話す際には、現在の体調、睡眠状態、食欲の有無、主治医のコメント、本人が心配していることなどを確認します。大事なことなので何度も言いますが、休職中は療養に専念してもらうことが優先されますので、本人が聞いてこない限り、業務や職場の状況に関する話は控えることがポイントです。

    もし連絡がつかなくなったら?

    休職中の従業員と連絡がつかなくなったとき、どのように対応すればよいでしょうか。 この時、会社として重要なことは「会社対応の履歴を証拠として残す」ことです。

    休職中の従業員であっても、雇用関係が継続していることから、会社の安全配慮義務は及ぶと考えられています。そのため、休職中に当該従業員と連絡がつかなくなった場合、連絡を取るための対応を行い、その履歴を残すようにしましょう。会社が定める休職期間が終了すると自然(当然)退職となることもあり得ます。

    休職中に連絡がつかなくなった社員に対して、連絡を取ろうと会社側からのアプローチをせずに就業規則に則って退職手続きを行ったとしても、不当解雇として訴えられる可能性はゼロではありません。そのために、会社としてやるべきことをやったけどそれでもだめだった、という証拠を残すことは、のちに自然退職や解雇が発生した際の労務トラブルの防止につながります。

    また、連絡先は事前になるべく多く聞いておきましょう。本人のメールアドレス・電話番号などに加えて、家族など緊急連絡先も確認しておくことをお勧めします。社歴が長い社員などは緊急連絡先の番号が変わっていることもあるため、休職に入る前に改めて確認しておくと安心です。

    実際に連絡がつかなくなった時に行いたい3つのステップ

    では、実際に連絡がつかなくなった時の対応について、主な3つの対応をみていきましょう。

    ステップ1 本人へ連絡+留守電

    休職中の従業員と連絡が取れない場合は、従業員の安否確認を優先することが大切です。本人へ複数回連絡を取り、留守電が設定されているようであれば留守電にメッセージを残します。その際には、いつまでに連絡がない場合は、自宅訪問や緊急連絡先に連絡する可能性があることも添えておきます。

    ステップ2 緊急連絡先へ連絡

    次に、家族などの緊急連絡先へ連絡です。電話番号が不明な場合は手紙を送ることも一例です。家族と連絡が取れた場合、本人の状況確認や本人への伝言などを行います。

    ステップ3 本人の自宅へ訪問

    もし家族にも連絡がつかない場合、次の手段は、本人の自宅へ訪問です。複数回訪問し、何度インターホンを押しても出ない場合、大家や警察へ連絡することも検討となります。訪問したという証拠として、メモ書きを残すことや訪問時の様子を写真に撮っておくと、後々トラブルになった際に訪問した事実を立証することができます。

    どのような手段をとっても本人や家族と連絡が取れず、休職期間が終了する場合は、就業規則に則り休職期間の延長や退職手続きを行います。なお、自然退職が予測される場合は、退職予定日の1カ月前くらいに従業員へ「〇月〇日までに連絡が取れない場合は退職となる」といった最終連絡期限を書面で通知しておくと、「退職になるなんて知らなかった」と言われることを避けることができるでしょう。連絡が取れない場合は書面を送る際に内容証明などの形式をとり、書面を受け取ったという記録を残すことも重要です。

    このように、休職中の従業員と連絡が取れなくなったときに重要なことは、「会社対応の履歴を証拠として残す」ことです。会社としてやるべきことを行ったという記録を残すことで、連絡が取れず自然解雇となったとしても妥当な解雇であったといえる状態にしておきましょう。

    休職に関する基礎知識はこちらの記事で詳しく解説しています。
    【必見】休職者が出る前に知っておきたい休職の基礎知識

    まとめ

    以上が、突然「休職を要する」診断書が出てきた際の会社対応と注意点についてです。診断書が提出されたら、休職理由を根ほり葉ほり聞くことは避け、休職開始日の指定がない限り、原則翌日から休職に入ってもらいましょう。診断書を現場管理職が受け取った場合は、人事に共有し人事が適切に保管しましょう。休職中の連絡は電話で月1~2回程度にとどめ、会社側の窓口を人事担当者として業務現場と切り離すことが重要です。休職者の安全や健康を最優先に考えますが、万が一、休職者と連絡が取れなくなった場合は、会社がやれるだけの対応をしたというエビデンスを残すことが、後々のトラブル防止につながります。対応に悩んだ際は、産業医や弁護士に相談しながら検討をしてきましょう。

    エリクシアでは、メンタル不調者発生時の対応フロー整備や、休職時に必要な各種ひな形の提供を含めて、人事担当が安心して運用できる体制づくりのサポートや実際に不調者が発生した時の対応方法のご相談も行っています。ぜひお気軽にお問合せください。

    休職者対応に役立つ資料をご用意しています

    今回のコラムでご紹介した内容を実践できる、簡易版 休職中の連絡フォーマットをご用意しました。自社用にアレンジして、ぜひご活用ください。

     

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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