産業医によるWeb面談(面談指導)と7つの留意点

online-industrial-physician

ウェブや電話による産業医面談の実施はあり?なし?

新型コロナウイルスの影響やリモートワークの浸透により、これまでは事業所に訪問し対面で行われていた産業医の業務も、一部オンラインで実施することが可能になりました。2020年8月に安全衛生委員会等へのオンラインによる出席が認められ、同年11月からはオンラインによる面談指導が認められました。職場の定期巡視については引き続き少なくとも毎月1回、実地で行うことが求められていますが、今後も衛生管理業務のオンライン化の流れは広まっていきそうです。そこで、今回は産業医がオンラインで面談を実施する際に留意しておくべきポイントをまとめました。検討している会社の方はぜひ確認してみてください。

初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • ウェブや電話による産業医面談の実施はあり?なし?
  • オンライン産業医面談における7つの留意点
  • オンラインによる産業医面談(面談指導)のメリット
  • オンラインによる産業医面談(面談指導)のデメリット
  • オンライン面談(面談指導)に必要な時間
  • まとめ
  • 初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    オンライン産業医面談における7つの留意点

    面談指導(産業医面談)は、『労働安全衛生法の第66条の8』に規定されており、「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない」とされています。ここで示す「面談指導」には、一定時間を超え面談必須となった長時間労働面談や、本人希望のもと実施される長時間労働面談ストレスチェック高ストレス者面談が該当します。

    これら面談の実施方法については、以前は「原則対面」でしたが、2020年11月にオンラインでの面談が認められるようになりました※。

    ただし、オンラインによる面談指導を実施する際には留意点も示されています。今回は大事なポイントを7つにまとめましたので確認していきましょう。

    情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について 令和2年11月19日基発1119 第2号

    産業医の導入やそもそも産業医とは何か、仕事内容などについて解説している記事もあります。
    初めての産業医選任 探し方、相場、選任、届出の基本
    産業医とは?産業医の役割と8つの仕事内容

    1. 会社は事前に面談者に関する情報提供を行う

    厚労省は情報機器を用いた面接指導つまりオンラインによる産業医の面談指導にあたって、まず下記の情報を提示することとしています。

    事業者は、面接指導を実施する医師に対し、面接指導を受ける労働者が業務に従事している事業場に関する事業概要、業務の内容及び作業環境等に関する情報並びに対象労働者に関する業務の内容、労働時間等の勤務の状況及び作業環境等に関する情報を提供しなければならない

    つまり、オンラインによる面談指導を行う際にも、予め面談対象となった労働者の情報、直近の勤務状況等を会社は面談を行う医師へ情報提供する必要があるということです。

    2. 面談指導を実施する医師はなるべく産業医であること

    「医師による面談」という記載から、面談指導は外部クリニック等の医師でも構わないという認識もあり得ますが、安衛法第66条の8が規定する面談指導の実施者は「産業医」が望ましいとしています。面談指導を実施する医師については、以下いずれかの場合に該当することが望ましいと定められていますので、確認しましょう。

    ①面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合
    ②面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合。
    ③面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合。
    ④面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に指導等を実施したことがある場合。

    3. 表情、顔色、声、しぐさ等を確認できる方法で行うこと

    基本的な考え方として、産業医を含め医師による面接指導は、「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされています。通常、産業医は面談指導を行う際に、労働者本人とのやり取りや、表情・しぐさ・話し方・声色といった様子から、労働者の疲労の状況やストレス状況等を把握します。把握した情報をもとに、産業医は、指導の内容や、就業上の措置に関する判断を行います。そのため、状況把握やその後の判断を行うために必要なやり取りには円滑性が求められることから、声以外の情報が得られない電話を用いた面談指導は基本的にNGと考えてよいでしょう。

    なお、安衛法第66条の8に該当する「面談指導」は、勤務時間が一定時間を超え面談必須となった長時間労働面談や、本人希望のもと実施される長時間労働面談、ストレスチェックで高ストレスと判定された人に実施される高ストレス者面談が該当します。

    ちなみに長時間労働面談や高ストレス者面談以外の面談(健康相談・メンタル不調者面談・フォロー面談など)については特段、実施方法に取り決めはありません。これらの面談については、対面でも、オンラインでも、電話でも実施できると考えられます。ただし、面談を行う医師としては、状態を正しく把握するために顔が見える状況が望ましいと考えるケースもあるため、実施方法は面談を行う医師と相談して検討することをお勧めします。

    4. 操作がしやすく・通信環境・セキュリティが保たれていること

    面談指導を受ける労働者にとって、オンラインツールの操作が複雑でなく容易に利用できることや、情報セキュリティ (外部への情報漏えい防止不正アクセス防止)が確保されていることなどを満たす必要があります。

    5. 衛生委員会等で予め調査審議し、事前に労働者へ周知すること

    日常的にオンライン会議ツールを利用していると意外に忘れがちなことが5点目です。オンラインによる面談指導を行う際には、衛生委員会等でその旨を共有し、労働者へ周知することとされています。

    6. プライバシーへの配慮をすること

    当然のことですが、オンラインによる面談指導を実施する際も、面談指導の内容が第三者に知られることがないような環境整備が求められます。オンライン会議のリンクは、面談者ごとに個別に発行を行うなど、人事側で面談設定を行う際に配慮しましょう。

    7. 面談指導を実施する医師と会社が連携できる体制を整備しておく

    オンラインによる面談指導の際は、「つながらない」という物理的トラブルのみならず、面談指導を行った結果、緊急対応が必要なケースも起こりえます。面談中の緊急連絡先を共有しておくだけでなく、面談後に医師と人事とで振り返りをする時間を設けるなど、連携を取りやすい体制を用意しておくことが大切です。

    オンラインによる産業医面談(面談指導)のメリット

    オンラインによる面談指導の大きなメリットは「面談への障壁が下がる」ことです。例えば下記のような従業員にとっては大きなメリットがあります。

    ・忙しい従業員

    過重労働面談が必須になっている従業員は、忙しい従業員です。産業医面談の時間が惜しく、面談を受けることに難色を示していることも少なくありません。オンラインによる実施であれば移動も必要なく、面談を受ける労働者にとっては受けやすくなります。

    ・オフィスにいない従業員

    対面の場合、産業医・従業員ともに事業場へ出向く必要がありました。オンラインによる面談であれば、テレワーク中や出向先、営業先などに直行直帰をしている従業員はわざわざ事業場へ出向いてくる必要がないため、ネット環境さえ整っていればどこにいても面談をすることが可能です。

    オンラインによる産業医面談(面談指導)のデメリット

    一方で、デメリットとしては「従業員が発する細かなサインがわかりづらい」ということが挙げられます。オンラインによる面談指導では、表情、顔色、声による情報は比較的捉えることはできます。ただし、下記のようなサインについて見逃してしまう可能性は否定できません。

    ・手や足のしぐさ

    メンタル不調者の中には手足が常に動いており落ち着きがない、手が震えているなどの症状が出ることがあります。例えば、復職面談の際、本人は「体調はよくなりました」と話していても、実際には落ち着きがなく、手が震えておりまだ十分に体調が回復していない場合があります。

    オンラインによる面談指導の場合、目が泳いているという症状があれば発見は可能ですが、手足など体の細かな動きはあまり見えないため、対面での面談で発見できたサインを見逃す可能性はゼロではありません。

    ・外見の乱れ

    服装や髪形、化粧など外見の乱れからメンタル不調のサインを拾うこともあります。しかし、オンラインによる面談でかつ面談者がリモートワークをしている場合、あえて整えていないのか、それとも気力の低下で乱れているのかがわかりづらいこともあります。

    オンライン面談(面談指導)に必要な時間

    オンラインと対面による面談指導など手段が違うことによる所要時間の変化はありませんが、面談の種類や従業員の状態によって所要時間は変わります。スケジュールを検討する時に悩む場合は、以下に面談の種類別に所要時間をまとめましたので参考にしてください。

    面談の種類別の所要時間例

    健康相談/健康指導

    健康相談/健康指導とは、健康診断の結果を踏まえた保健指導や健康相談などの面談です。所要時間は10分~15分程度ですが、比較的早く終わることが多いです。

    過重労働者面談

    過重労働者面談とは、1カ月あたりの時間外労働時間が100時間を超えた場合や、80時間を超えた労働者から面談の申し出があった場合に行う面談のことです。所要時間は10分~15分程度です。面談では従業員の心身に健康障害の影響が起きていないかを確認します。状態が悪い場合は、前述した所要時間よりも長めにかかることもあります。

    メンタル不調者面談

    人事や上司から見て「勤怠が乱れている」「行動や様子がおかしい」など気になる従業員がいた場合や、本人が希望した場合に行う面談がメンタル不調者面談です。所要時間は、状態が悪い場合や初回面談の場合は30~45分ほど、継続的なフォロー面談であれば10~15分程度が多いです。

    復職判定面談

    復職判定面談とは、休職中の従業員が復職できるかどうかを確認するための面談です。本人のみならず人事担当者と連携して行うこともあるため、30~45分ほど必要です。

    復職後フォロー面談

    復職した後、経過に問題がないかを確認するための面談です。10~15分ほどで終わりますが、復職者の状態によっては長くなることがあります。

    高ストレス者面談

    ストレスチェックの結果で高ストレス者と判定された人が希望した際に行う面談です。所要時間は10分~15分程度です。

    提示した所要時間はあくまで目安ですので、従業員の状態などで変わってきます。面談のスケジュールを固める際には、面談を担当する産業医へどの程度時間を確保すべきか相談しながら決めていきましょう。

    まとめ

    2020年11月より安衛法に基づく医師による面談指導はオンラインによる実施が認められました。一方で、面談指導を行う医師が必要と考える場合には、対面による面談での実施が引き続き必要となることに注意しましょう。オンラインによる面談は要件を満たすことで、円滑に実施をすることが可能です。

    オンラインによる面談指導の要件を確認し、オンラインによる面談を行う際には、あらかじめ衛生委員会での共有と労働者への周知、緊急時に対応できる体制を備えたうえで行っていきましょう。面談指導は従業員にとって大切な機会です。面談指導の実施は会社を継続的にみている産業医に依頼することをお勧めします。

    初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!

    色々と不安の多い、初めての産業医導入。 「初めての産業医選任」「衛生管理体制の構築」を不安なく安心して運営ができるようエリクシア産業医サービスは人事担当者を支援します。>詳しくはこちらへ

    ご相談はお気軽に

    ※お問い合わせ内容や地域によってはご希望に添えない可能性がございます。 あらかじめご了承ください。 ※産業医提供事業者の方は問い合わせをご遠慮ください。

    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

    著作者サムネイル

    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

    本記事の内容に関するお問い合わせ、記事転載や報道関連のお問い合わせは下記ページよりお問い合わせください。

    https://www.elixia.co.jp/contact/

    この記事を読んだ方におすすめな記事

    カテゴリー  >すべて表示

    組織と働き方についての書籍
    エルナビ
    ココロモニター
    ココロラーニング
    簡易コンサルティング
    エリクシア産業医