雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育を実施して労働災害を防止しましょう!

雇入れ時の安全衛生教育で労災防止!|エリクシア

安全衛生教育を軽く見てはいけません!

いきなりですが、あなたの会社では雇入れ時と作業変更時にきちんと「安全衛生教育」を実施していますか?マニュアルを渡すだけになっていたり、忙しいからと短時間で終わらせたりと形式だけのものになっていませんか?

近年、経験年数の短い労働者の労働災害が増加しています。平成26年の厚生労働省の調査によると、製造業では、経験3年未満の労働者の労働災害は全体の約40%を占めており、うち1年未満の労働者は約25%を占めています。経験が短い労働者は、作業や作業環境に関する知識、技能が未熟であることに加え、危険を予知する力も不十分です。そのため、作業を開始する前の安全衛生教育は労働災害を防止するためにとても重要です。

今回は雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育を中心に、安全衛生教育の重要性や実施するうえでの注意点等についてわかりやすく解説していきます。

衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 安全衛生教育を軽く見てはいけません!
  • そもそも安全衛生教育とはーなぜするの?種類は?
  • なぜ雇入れ時と作業内容変更時に安全衛生教育が必要?しなかったら罰則を受ける可能性も・・・
  • できていますか?雇入れ時と作業内容変更時に行うべき8つの衛生教育
  • どうやって実施する?方法は大きく2通り!
  • まとめ
  • 衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    そもそも安全衛生教育とはーなぜするの?種類は?

    まずは安全衛生教育の目的から確認していきましょう。

    安全衛生教育を実施する目的は、「労働災害の発生を防止すること」です。安全衛生教育の実施は、労働安全衛生法で事業者の義務として規定されています。

    うちの会社では労働災害なんて無縁だから・・・」と油断してはいませんか?

    労働災害はいつ起きるか予想できません。「今日この瞬間に労働災害が起こるかもしれない」という意識を常に持ち、そのリスクを少しでも減らすために従業員へ適切な教育を行っていくことが大切です。 

    会社が行うべき安全衛生教育とは

    会社が行う安全衛生教育は、法令上実施が義務付けられているものと、事業場独自で行うものがあります。どのような種類があるのか確認していきましょう。

    種別 安全衛生法の根拠条文 名称
    義務 第59条第1項 雇入れ時の教育
      〃 第2項 作業内容変更時の教育
      〃 第3項 危険有害業務従事者への特別教育
    第60条 職長等教育
    努力義務 第19条の2 労働災害防止のための業務に従事する者への能力向上教育
    第60条の2 危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育

    出典:一般社団法人安全衛生マネジメント協会

    さらに、法令では定められていませんが、事業場独自で行うものの例として下記のようなものがあります。

    ・安全衛生講習会の実施
    ・消火訓練
    ・避難訓練等の実施 ※法令で定められているものを除く
    ・安全朝礼の実施
    ・外部講習会の参加 など

    ただし、中途入社した者で、前職などで十分な知識および技能を有していると認められる労働者については、安全衛生教育を省略することが可能です。

    対象者は該当する従業員全員です!

    次に、誰が対象者で誰が指導役として実施するのかという基本事項について確認していきましょう。

    【実施対象者】

    安全衛生教育を受ける対象は、作業者、安全衛生に係る管理者、経営者や役員などトップ層、安全衛生専門家、技術者などです。また、正社員だけでなく、パートやアルバイトを含め該当する従業員全員に実施する必要があります。

    研修の種類別に対象者を具体的に述べると、雇入れ時の安全衛生教育は新入社員など新しく雇用した者、作業内容変更時の教育は新たに作業に従事する労働者が対象です。また、特別教育は、特定の危険性を伴う業務を行う場合に必要となる専門的な教育のことで、労働安全衛生規則第36条「特別教育を必要とする業務」で規定されている、アーク溶接や小型車両系建設機械(フォークリフトやクレーンなど)の運転、酸素欠乏危険作業などを含む業務を行う者が対象です。職長教育は、新たに職務に就くこととなった職長や作業中の労働者を直接指導または監督する者などが実施対象として規定されています。

    【指導者】

    安全衛生教育は、主に会社の総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全管理者、もしくは業務に精通した先輩労働者などが指導者として実施します。

    なぜ雇入れ時と作業内容変更時に安全衛生教育が必要?しなかったら罰則を受ける可能性も・・・

    安全衛生教育は法令で実施することが義務付けられていますが、単に法令で定められているから実施すればいいのではなく、重要性をきちんと理解したうえで適切な教育を行うことが大切です。もし実施しなかったときにどんなリスクがあるのか、罰則を科される可能性があるのかについても解説していきます。

    安全衛生教育を実施して労働災害を防止しましょう

    安全衛生教育の目的は「労働災害を発生させないこと」と前述していますが、より詳しく安全衛生教育を実施する重要性について、会社側と従業員側の2つの側面から確認していきましょう。

    【会社側】

    1.労働災害の未然防止

    労働災害を防止するために必要な対策は①設備や機材などのモノの面で「不安全な状態」とならないこと、②労働者自身というヒトの面で「不安全な行動」とならないことです。安全衛生教育は②の「人が安全な行動を取ること」を主な目的として実施します。労働災害が起こると、ケガや病気など従業員へのマイナスはもちろんですが、会社としても人員喪失や損害賠償請求の可能性、企業イメージの低下など様々な悪影響を及ぼします。

    2.従業員の人材定着・離職防止につながる

    もし、自分が会社から事前に適切な安全衛生教育を受けず、いきなり危険有害業務などを任せられたらどう感じるでしょうか。おそらく、ほとんどの人が業務へ大きな不安を抱え、会社に対して不信感を感じるでしょう。安全衛生教育をきちんと行い、危機管理がしっかりしており従業員を大切にしている会社と思ってもらうことは、人材の定着や離職防止につながります。

    【従業員側】

    1.労働災害の危険から身を守る

    危険有害業務に従事する労働者が安全についての知識や技能を十分に持たず、作業方法を誤ってしまうと、すぐさま大きな労働災害につながりかねません。自分の身を守るためにも、業務に関する知識や技術、危険を予知する力がとても重要です。

    2.自分だけでなく他者も守る

    実際に作業を行う労働者や労働者を指揮、監督する者が安全についての知識や技能を十分に有していないまま業務を行うことは、周りにいる他の労働者にとっても非常に危険です。自分を守るだけでなく、同じ現場で働く他の労働者も守るために適切な安全衛生教育を受ける必要があります。

    実施しなければ罰則も科せられるかも・・・

    雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育は、会社が行わなければならない義務として規定されているため、万が一実施していなかった場合、罰則が科せられます。過去には安全衛生教育を怠り、重大な労働災害が起き、会社と現場責任者が書類送検された事例もありますので、確実に実施しましょう。

    できていますか?雇入れ時と作業内容変更時に行うべき8つの衛生教育

    安全衛生教育の中でも、特に雇入れ時と作業内容変更時の教育は実施する機会が多いでしょう。その2つの安全衛生教育の具体的な内容について解説していきます。

    雇入れ時と作業内容変更時に実施すべき8つの教育

    雇入れ時と作業内容変更時に実施する安全衛生教育の項目は労働安全衛生規則35条で下記のような内容が定められています。

    労働安全衛生規則35条
    ①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
    ②安全措置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
    ③作業手順に関すること
    ④作業開始時の点検に関すること
    ⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
    ⑥整理、整頓及び清潔の保持に関すること
    ⑦事故時等における応急措置及び退避に関すること
    ⑧前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

    ただし、特定の機械や有害物質などの取扱いがないサービス業や、オフィスワークが中心の業種(事務職など)については、①~④の項目を省くことができます。

    実施した内容は記録に残しておきましょう

    特別教育では、受講者や科目等の記録を作成して、3 年間保存しなければならないとされていますが、雇入れ時と作業内容変更時の教育については、実施した記録を残しておかなければいけないと法律上明記されているわけではありません。しかし、労働者ごとに、どのような教育をいつ頃に受けたか等の記録を作成しておくことは教育を継続的、効果的に行っていくために重要です。保存期間は、特に決まりはありませんが、特別教育と同程度の期間保存しておくとよいでしょう。

    安全衛生教育の実施における3つの注意点

    安全衛生教育を実施する上で、注意することは3つあります。それぞれ順番に見ていきましょう。

    1.労働時間内での実施

    安全衛生教育は、労働災害防止のために事業者の責任において実施する義務があるため所定労働時間で行うことが原則です。法定外時間に行われた場合は割増賃金を支払わなければなりません。

    2.マニュアルを渡すだけだとNG!?外国人労働者も母国語で

    会社によっては、「読んでおいてね」とマニュアルを渡すだけで安全衛生教育を実施したことにする会社も少なくありません。しかし、マニュアルを渡すだけでは、忙しくて読まない可能性があることや読んだとしても対象者がどこまで理解したのか理解度を測ることは難しいです。きちんと時間を確保して指導者から直接教育を実施するようにしましょう。

    また、外国人労働者に対しては、一般に日本の労働慣行に習熟していないことや日本語の習得が不十分であるため日本語での教育では理解が十分にできない可能性があります。そのため、外国人労働者が確実に理解できる方法で実施する必要があります。母国語を用いる、視覚教材を用いるなどの方法で確実に実施するようにしましょう。

    3.派遣社員は教育の種類によって実施責任が異なるのでご注意を

    派遣労働者に対する安全衛生教育は教育の種類ごとに実施する責任が異なります。雇入れ時の教育については派遣元で実施しますが、作業内容変更時は派遣元・派遣先双方が行わなければなりません。また、法令で定められた危険有害業務に従事させる際の特別教育は派遣先で実施しなければなりません。さらに、安全衛生教育はできるだけ具体的に行われることが望まれるため、基本的な教育は派遣元が行い、その内容を派遣先に通知した上で、派遣先が派遣元の委託を受け、現場の機械設備、実際の作業手順等に基づき具体的な安全衛生教育を行うこともあります。その場合には、派遣元は派遣先における教育の実施状況を確認する必要があります。教育の種類によって実施責任が異なるので双方できちんと確認しておくようにしましょう。

    どうやって実施する?方法は大きく2通り!

    ここまでの内容で、安全衛生教育の種類や必要性について解説してきました。では、安全衛生教育は実際にどのように行ったらいいのでしょうか。

    外部機関を上手に活用しよう

    安全衛生教育を実施する方法としては大きく2通りの方法があります。「自社で行う」か「外部へ委託する」かです。

    自社で行う」場合は、マニュアルを作成し、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全管理者などが講師として指導します。雇入れ時や作業内容変更時の安全衛生教育は危険有害業務に従事させる際の特別教育と違い、法令等での細かいカリキュラムや教育時間の指定がありません。したがって安衛則第35条を踏まえながら、各社で自社の業務に合わせて教育内容を決めなければならず、自社(特に中小企業)でカリキュラムを一から作るのはなかなか難しいという会社もあるでしょう。そのような時は、「外部へ委託する」ことも一案です。例えば、親企業による指導・助言を受けることや、安全衛生団体や組合が開催している講習会に参加するといった方法などがあります。

    まとめ

    今回は安全衛生教育について解説しました。特に経験が少ない労働者は、労働災害の発生率が高くなるので、速やかに安全衛生教育を行う必要があります。「自分は大丈夫」「うちの会社は大丈夫」と油断せず、雇入れ時や作業内容変更時などに必ず実施するようにしましょう。また、会社の労働者には、常に安全衛生教育で学んだ内容を意識して作業をするように促していきましょう。作業に慣れている人であっても、いつ何が起こるかわかりません。慢心せず、自分の身を守り、周りの身も守るということを意識して行動することが大切です。

    もし安全衛生教育の構築や衛生管理体制を整備したいときにお悩みがありましたら、
    ぜひお気軽にエリクシアにご相談ください。
    専門の保健師や産業医が丁寧に解説いたします。

    衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!

    全国及び海外に拠点を持つ会社において実現の難しい課題である「衛生管理体制の均質化」。 当社はノウハウや統括産業医を活用し、従業員ケアのコントローラーとして「均質化」支援を行っています。
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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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