はじめて健康経営優良法人認定制度にチャレンジする中小企業向け!認定までの道のりを分かりやすく解説

健康経営優良法人認定制度,中小企業,
産業医のエリクシア

健康経営認定までのプロセスと認定のために押さえておきたい5つのポイント

健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。近年「健康経営」の注目度が上がっており、健康経営に取り組む企業が増えてきています。

今回の記事では、初めて健康経営優良法人認定の取得を目指す中小企業の担当者向けに、健康経営優良法人の認定までのプロセスについてご紹介していきます。健康経営優良法人認定にチャレンジするには、「健康宣言事業」への参加も必要となるため、そちらについても解説しています。

なお、健康経営の基本的な考え方注目された背景取り組むメリット、健康経営を始める前の事前準備についてはヒトは会社の大事な資産!「健康経営」はメリットがたくさん』という記事で解説しています。健康経営について初めて触れるという方は先に上記記事をお読みいただいた方が、より理解しやすくなります。お時間がありましたらぜひ目を通してみてください。

この記事でわかること(目次)
  • 健康経営認定までのプロセスと認定のために押さえておきたい5つのポイント
  • 健康経営の認定はどれを取得するべき?
  • 健康経営優良法人認定制度とは?
  • 健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定までのプロセス
  • まとめ
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    健康経営の認定はどれを取得するべき?

    これから健康経営に取り組む企業の中には、「せっかく健康経営に取り組むのだから、やりっぱなしではなく、健康経営の認定を取りたい!」と思っている企業も多くあることでしょう。健康経営の評価・認定制度の数は、年々増加しています。例えば、経済産業省と東京証券取引所が運営する「健康経営銘柄」、経済産業省と日本健康会議が運営する「健康経営優良法人認定制度」、その他にも厚生労働省の「安全衛生優良企業公表制度」や「健康寿命をのばそう!アワード」などがあります。また、上記した代表的なもの以外にも全国の自治体独自の評価・認定制度も多くあります。

    このように健康経営の評価・認定制度は多くの種類があるため、どの認定を狙えばいいのか迷いますよね。初めて健康経営に取り組む中小企業は、「健康経営優良法人認定制度」の取得を目標にしてみてはいかがでしょうか。「健康経営優良法人認定制度」は、健康経営の評価・認定制度の中でも知名度が高く、中小規模法人部門の認定率は毎年80%前後と比較的認定されやすいのでおすすめです。

    健康経営優良法人認定制度とは?

    健康経営優良法人認定制度は、経済産業省によって企業の健康経営の取り組みを推進するために2016年に創設されました。創設以前にも「健康経営銘柄」という健康経営の認定制度がありましたが、東京証券取引所の上場企業の中から選定されるため、対象がごく一部に限られていました。健康経営優良法人認定制度は、そうした基準を取り払い、上場していない大企業・中小企業も対象として、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などの法人を認定する制度です。

    健康経営優良法人」に認定されると、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから「従業員を大切にしている会社」というホワイトでクリーンなイメージを持たれ、企業のイメージアップにつながります。また、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用も可能となります。そのほか、自治体や金融機関等においてさまざまなインセンティブを受けることができるなどのメリットがあります。

    健康経営優良法人認定制度には、下の図の通り中小規模法人部門大規模法人部門の2つの部門があります。中小規模法人部門では、加入している協会けんぽや健康保険組合など医療保険者が実施する健康宣言事業への参加が必須となります。一方、大規模法人部門では、医療保険者が実施する健康宣言に参加して「宣言の証」を取得することが必須です。自社がどちらの部門に該当するのかは経済産業省『健康経営優良法人の申請について』のページをご確認ください。

    健康経営優良法人認定制度の概要表

    今回の記事では、中小企業の担当者向けとして、健康経営優良法人認定制度の中小規模法人部門認定までのプロセスを解説していきます。

    健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定までのプロセス

    健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定は、申請をするための条件があります。(無条件でできるわけはありませんのでご注意ください。)その条件とは、加入する協会けんぽや健康保険組合などの医療保険者が実施する「健康宣言事業」に参加していることです。また、申請した後、認定までには健康経営優良法人認定委員会が実施する審査があります。以下順番に説明していきます。なお今回記載している条件は2022年度のものです。細かい条件については毎年変更が入ることが多いため、必ず申請する年の認定条件を確認してください。

    まずは健康宣言事業に参加

    健康経営優良法人認定(中小規模部門)に申請する前段階としてやるべきことがあります。それは、「健康宣言」を行い健康経営に関する具体的な取り組みをすることです。健康宣言とは、企業全体で健康経営に取り組むことを宣言することです。宣言と言っていますが、ただ単に「健康経営に取り組んでいます」と声を上げるだけではなく、健康経営の施策を実施しPDCAを回すなど一定の成果が求められます。(これを健康宣言事業と言います。)「健康宣言事業」は自治体ごとで実施しており、その名称も自治体ごとに異なるため、詳しくは各都道府県の医療保険者へ問い合わせてみてください。まれに保険者も自治体も実施していないことがあります。その場合、会社独自で実施することで代替え可能です。

    今回の記事では一例として、協会けんぽ東京支部で実施している健康宣言事業の「健康企業宣言」をご紹介します。これは、東京都の健康保険組合に加入している企業が対象の制度で、一定の成果をあげた場合は、「健康優良企業」として認定され、健康宣言事業に参加したとみなされます。また東京都の「健康優良企業」には銀の認定と金の認定があり、健康経営優良法人認定制度に申請する場合は、銀の認定の取得が必須です。

    全国健康保険協会のページはこちら

    健康優良企業 認定までのステップ

    「健康優良企業」の銀の認定取得までの具体的なステップを確認していきます。銀の認定では、健康経営を行うために職場の健康づくりに取り組む環境を整えます。

    STEP1:課題の確認

    チェックリストを使用して自社の課題を把握します。(チェックシートについては、加入する健康保険組合にお問合せください。)チェックリストの項目は、2022年4月改訂版では下記のように18項目あります。それぞれ「できている・概ねできている・できていない」の3段階で評価し、点数を足していきます。合計点数が100点満点中80点以上になると達成基準を満たします。自社がどんな課題を抱えているのか、これから取り組む必要がある課題についてチェックリストを使って洗い出しましょう。


     ◆健診結果の活用
     ①健診結果で再度検査が必要な人に受診を勧めているか
     ②特定保健指導該当者には特定保健指導を実施しているか

    ◆健康づくりのための職場環境
    ①職場の健康づくりの担当者を決めているか
    ②従業員が健康づくりを話し合える場はあるか
    ③健康測定機器等を設置しているか
    ④職場の健康課題を考えたり、問題の整理をしているか
    ⑤健康づくりの目標・計画・進捗管理を行っているか

    ◆職場の「食」
    ①従業員の日頃の飲み物に気を付けているか
    ②従業員の食生活が乱れないような取り組みを行っているか

    ◆職場の「運動」
    ①業務中などに体操やストレッチを取り入れているか
    ②階段の活用など歩数を増やす工夫をしているか

    ◆職場の「禁煙」
    ①たばこの害について周知活動をしているか
    ②受動喫煙防止対策を講じているか

    ◆「心の健康」
    ①従業員の心の健康に関する取り組みをしているか  
    ②気になることを職場で相談できる雰囲気を作っているか

    STEP2:申し込み

    参加するためには、所定の応募用紙を健康保険組合へ提出します。応募用紙については、加入する健康保険組合にお問い合わせください。取組み企業として登録されると、健康保険組合から健保連東京連合会が発行する「健康企業宣言 宣言の証」が交付されます。参加は無料で、宣言期間は1年です。

    STEP3:チャレンジ

    宣言後約6カ月以上の取り組みが必要です。STEP1のチェックリストを取組むメニューの参考資料として使用しましょう。認定の採点基準として、本社のみ、支店のみ、工場のみ等、一部の事業場ではなく企業全体の取り組みとなっているか、継続的に取り組まれているか(過去に行った単年の取り組みとなっていないか)といった基準もあるため注意しましょう。

    STEP4:振り返り

    「実施結果レポート」を加入する健康保険組合へ提出します。評価項目はSTEP1で使用したチェックリストの項目と同じです。「実施結果レポート」を自己採点し、80点以上の点数を満たした事業所は、「実施結果レポート」及び取り組みのエビデンスとなる添付資料を提出します。提出期日は、宣言日から起算して1年経過後の末日です。なお、宣言後6カ月以上継続して取り組みを実施し、上記の点数を満たした場合は期日前に提出できます。(「実施結果レポート」については、加入する健康保険組合にお問い合わせください。)

    STEP5:健康優良企業 銀の認定取得

    協会けんぽ東京支部によって認定され「健康優良企業(銀の認定証)」が交付されます。「銀の認定」の審査期間につきましては、毎月末が実施結果レポートの締切日となっており、翌々月の初旬頃に認定となります。

    ***

    健康経営優良法人に申請するための条件は銀の認定取得まででクリアになりますが、さらに「健康経営に力を入れたい!」という会社は、金の認定にもチャレンジしてみましょう。ちなみに金の認定では、職場の健康経営・健康づくりをさらに進め、安全衛生にも取り組んでいきます。認定までの流れは銀の認定をほぼ同じです。銀の認定は、協会けんぽ東京支部が認定をしていますが、金の認定は、健康企業宣言東京推進協議会によって認定されます。

    健康宣言事業に参加(東京都の健康保険組合に加入する企業は銀の認定を取得)すると、いよいよ健康経営優良法人認定制度にチャレンジできます。次は、健康経営優良法人認定取得までのプロセスを解説していきます。

    健康経営優良法人認定にチャレンジ!

    健康経営優良法人認定までのステップを確認していきます。

    STEP1:加入している医療保険者の「健康宣言事業」に参加

    前章で説明した内容です。健康経営優良法人認定制度の中小規模部門に申請するためには加入する協会けんぽ、健康保険組合連合会、国保組合など医療保険者の実施している「健康宣言事業」に参加していることが必須です(※東京都の医療保険者に加入している企業は、「銀の認定」が必須)。もし自社が加入している医療保険者が健康宣言事業を実施していないときは自治体が実施する健康宣言事業に参加することで代替が可能です。また、どちらも実施していないときは会社が独自で実施することで代替えできます。

    STEP2:電子申請書をダウンロードする

    申請は電子申請になるので、申請用ID発行サイトにアクセスし、企業情報を登録します。登録後にIDとパスワードと申請書のダウンロードサイトのURLが届くので申請書をダウンロードします。

    申請用のID発行サイトは経済産業省のウェブページをご覧ください

    STEP3.:自社の取り組み状況を確認し、認定基準を満たすか確認する

    健康経営優良法人認定(中小規模法人部門)の評価項目に掲げる事項(下図参照)に取り組み、取り組み状況が認定基準を満たしているか「認定基準解説書」で確認します。健康経営優良法人の認定基準には必須項目選択項目があります。必須項目については、健康経営の基盤ですので、必ず押さえましょう。また、認定基準は毎年一部の項目が変わるため、認定を受ける年の認定基準解説書を事前に確認しておくようにしてください。認定基準確認書は経済産業省の健康経営のページからご参照ください。要件は変わる可能性がありますので必ず最新のものをご確認ください。

    STEP4:日本健康会議認定事務局へ申請

    電子申請書に必要事項を記載し、指定されたサイトにアップロードして申請します。

    STEP5:認定審査

    健康経営優良法人認定委員会によって審査が行われます。審査期間は例年おおよそ3~4ヶ月程度です。

    STEP6:日本健康会議において認定

    認定を受けると、健康経営優良法人のロゴマークの使用が可能となります。

    まとめ

    今回は、はじめて健康経営に取り組む中小企業向けに健康経営優良法人認定制度について解説しました。健康経営優良法人認定には、加入する協会けんぽや健康保険組合など医療保険者(または自治体)が実施する健康宣言事業への参加が必須です。また、宣言後は、約6カ月以上の取り組みが必要です。

    はじめて健康経営に取り組む会社の中には、ノウハウがないため、どのように進めたらいいのか、不安に思うかもしれません。もし健康経営に関してお悩みの場合、または衛生管理体制の整備などでお悩みの場合はエリクシアの産業保健チームがお役に立てるかもしれません。お気軽に下記フォームでご相談ください。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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