更年期障害を乗り越えてもらうために!会社ができること

更年期障害を乗り越えてもらうために、会社が出来ることー産業医のエリクシア

更年期障害への理解と会社で取り組みたいこと

誰しもがなる可能性がある「更年期障害」。40~50歳代の女性がなるイメージが強いかもしれませんが、実は男性の更年期障害もあることはご存じでしょうか。

更年期の症状は人によって様々で、なかなか周りの人に相談しにくいため1人で抱え込み、より深刻化してしまうことがあります。また、症状が重い人では、日常生活や仕事に影響が出てしまったり、仕事を退職せざるを得ない状態になったりと、決して個人の問題だけではありません。会社としても不調を抱える従業員に対して、適切なサポートを行っていく必要があります。

本記事では、そんな労働者に対して会社でできることについてお話していきます。ぜひ参考にしてみてください。

休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 更年期障害への理解と会社で取り組みたいこと
  • 知っておきたい更年期障害のこと
  • 更年期障害が及ぼす会社への悪影響
  • 更年期障害を上手に乗り切ってもらうために会社ができる3つのこと
  • まとめ
  • 休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!
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    知っておきたい更年期障害のこと

    更年期障害」という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。しかし、何歳ころから出やすいのかどんな症状があるのかなどを正しく説明できる方は多くはないかもしれません。まずは、更年期障害に対する正しい知識を確認していきましょう。

    そもそも更年期障害とは?

    更年期障害とは、更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気を伴わないもので、症状が重く日常生活に支障を来す状態のことを言います。女性の場合、閉経前の5年間と閉経後の5年間とをあわせた10年間を「更年期」と呼びます。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えます。女性の更年期は終わりがあるのが特徴です。一方、男性の更年期は40歳代以降を指し、終わりがないのが特徴です。更年期を迎えると、女性は女性ホルモン(エストロゲン)、男性は男性ホルモン(テストステロン)の低下や乱れにより心身に様々な不調を来すことがあります。性ホルモンの影響だけでなく、環境の変化や本人の性格、ストレスなどの心理的要因も更年期障害に大きく影響してきます。

    厚労省が令和4年に実施した更年期症状・障害に関する意識調査※によると、「更年期障害と診断されたことがある/診断されている」と答えた人の割合は、40歳代女性で3.6%、50歳代女性で9.1%と1割に満たないです。男性でも、40歳代男性1.5%、50歳代男性1.7%と、医療機関で更年期障害の診断を受けている人は多くないことが分かります。しかし、「更年期障害の可能性があると考えている人」の割合になると、女性では40歳代で28.3%、50歳代で38.3%、男性では40歳代8.2%、50歳代14.3%と決して他人事ではないことが分かります。

    ※令和4年 更年期症状・障害に関する意識調査(厚生労働省)

    どんな症状が出る?

    更年期障害の症状は男女で似ていますが、性別による特有の症状などもあります。男性と女性の主な更年期の症状については、下記の図をご覧ください。

    性別ごとの更年期の主な症状ー産業医のエリクシア

    一般的な対処法

    更年期障害に対する代表的な治療法をいくつか紹介します。

    まず性別に関係なく生活習慣の見直しが必要です。生活習慣の乱れは、更年期障害を悪化させる原因のひとつです。とくに睡眠不足運動不足は、症状の悪化に大きな影響を及ぼします。生活リズムを意識して整えることや、十分に睡眠時間を確保すること、適度な運動をすることなど基本的なことから始めていきます。

    もし生活習慣の改善をしても症状のコントロールが難しい場合は、医療的介入として、ホルモン補充療法や漢方薬、向精神薬など薬物治療といった選択が検討されることもあります。辛い症状でお悩みの方がいたら、一度受診をして対処法を相談してみるのも良いでしょう。

    更年期障害が及ぼす会社への悪影響

    更年期障害というと個人の問題と、とらえてしまいがちです。まだまだ更年期障害に対しての理解が進んでおらず、更年期障害で苦しむ労働者に対して支援が行き届いてない会社も多くあります。更年期障害がなぜ会社で取り組むべき問題であるのか、会社に及ぼす悪影響から考えていきましょう。

    休業や離職による人的損失

    労働者によっては、更年期の辛い症状により休業を余儀なくされる場合があります。また休業にとどまらず、更年期の症状により生活や仕事に悪影響が出ることを原因とする「更年期離職」につながることもあります。NHKと専門機関が共同で行ったインターネットアンケートをもとに日本女子大学が発表した報告によると、更年期離職を経験した人の人数は、今の40-50歳代で女性がおよそ46万人、男性がおよそ11万人、計57万人に上ることが明らかになっています。

    更年期障害の症状や重さは人それぞれで異なり、中には生活や就業に大きな支障を来すほどの症状に苦しむ人もいます。休職や離職防止のためにも働きやすい職場環境づくりが必要です。

    業務パフォーマンスの低下による生産性の低下

    従業員の心身の健康状態は、会社の生産性に密接につながりがあります。更年期の症状により、心身の健康状態が低下していると作業効率が落ちたり、ミスが増えてしまったりと、本来その労働者が持っている能力を十分に発揮できなくなってしまいます。結果として、症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態である「プレゼンティーズム」により、会社全体の生産性の低下につながる可能性があります。

    職場環境の悪化

    更年期症状が出る40~50歳代という年齢は、管理職や役員になる年代で、リーダーとして会社を引っ張っていく立場の方が多いです。更年期症状には、イライラしやすくなったり、抑うつ気分になったりと精神的症状が出現します。精神的に不安定になり、周りの社員との関りがうまくいかなくなってしまうことも考えられます。職場のリーダーである立場の人の健康状態は職場環境に大きな影響を及ぼします。更年期障害への対応は当事者だけでなく、他の労働者の働きやすい環境を作るうえでも重要といえます。

    更年期障害を上手に乗り切ってもらうために会社ができる3つのこと

    現在、更年期障害に対する公的制度としては、労働基準法に定められる生理休暇のような制度はなく、職場などでのサポート環境は十分とは言えません。しかし、近年は「健康経営」への関心も高まってきており、更年期障害に対して積極的に取り組みを進めている会社も増えてきました。また、会社には「安全配慮義務」があり、従業員に対して生命や身体の安全を確保しながら働けるように健康管理安全管理をおこなう必要があります。更年期障害を「個人の問題」と、とらえるのではなく、会社全体での取り組みが必要です。更年期障害を抱える労働者にとって働きやすい環境を整えるための取り組みの例を3つ紹介します。

    全労働者の更年期についての理解促進

    更年期障害に対する取り組みを進めていく上でまず必要なのは、労働者全体への更年期や更年期障害に対する理解促進です。更年期の時期、症状や程度、対処法など正しい知識を普及することが大切です。男女を問わず誰しもなる可能性がある更年期障害は決して他人ごとではありません。当事者だけではなく、周りの労働者を含め全労働者に対して健康セミナーの実施や、更年期障害に関するパンフレットでの周知などを行いましょう。

    辛い時に休める環境・制度づくり

    前述した通り、更年期障害に対する制度として、休暇制度を設けている会社は多くありません。また、労働者自身も更年期症状で悩んでいても、なかなか相談できず我慢していることや、会社を休むほどではないと考えている方も多くいるのが現状です。症状が辛い時に一時的に休めるスペースを設置することや、会社として公的な休暇制度を設けて取得できるような風土づくりが大切です。

    気軽に相談できる体制づくり

    更年期の症状について、「誰に相談すべきか、わからない」という労働者は多くいます。厚労省の令和4年更年期症状・障害に関する意識調査※によると、更年期症状で日常生活に影響が出ていることについて、誰かに相談しているか、という質問に対して、40 歳代女性、50 歳代女性では「相談しておらず、今後も相談しない/したくない」と回答した人の割合はそれぞれ45.5%、55.0%と最も高い結果でした。また男性では 40 歳代、50 歳代ではそれぞれ65.7%、67.0%という結果が出ており、男性の方が相談をしない/したくない傾向があります。相談しない理由としは、「相談しても解決しないと思ったから」、「それほど深刻な症状だと思っていないから」、「プライベートな問題なので相談するのがためらわれるから」などがあり、相談のハードルが高いことが分かります。自分からはなかなか言いだせない人もいるため、調子が悪そうな労働者がいたら周りから声をかけてみたり、産業保健スタッフに相談できる窓口の設置面談の実施など体制を整えたりすることも会社ができることの1つです。

    ※令和4年 更年期症状・障害に関する意識調査(厚生労働省)

    まとめ

    更年期障害という言葉自体の認知度は高いものの、中身の理解はなかなか進んでいないのが現状です。しかし、更年期は性別に関係なく誰しも迎えるもので、女性ホルモンや男性ホルモンの変化で心身に不調を来すなど、更年期障害により日常生活や仕事に大きな影響が出てしまう人もおり、更年期離職や休職は会社にとって決して無視できない問題です。そのため、労働者が健康で、いきいきと仕事を続けられるように、更年期障害に対する会社の取り組みが重要です。繰り返しになりますが、気軽に相談できる環境を整えることや、辛い時に休めるように休暇制度を整えるなど、更年期に入った人でも働きやすい体制づくりを進めていきましょう。

    休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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