休職者が出る前に知っておきたい休職の基礎知識~休職制度、対応、注意点

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正しい休職対応のススメ

皆さんは、自信を持って正しい休職対応を行えますか?

普段、休職対応の機会はなかなかないかと思います。特に中小企業では、休職対応は年に数回ほどあるかないかだと思いますので、休職対応に慣れていない方や、新しく担当になった方はどのように休職対応を進めていけばいいのか戸惑うかもしれません。しかし、休職対応は間違えるとトラブルになりやすいので、制度そのものの基礎知識だけでなく、手順や注意点などをあらかじめ知っておきたいものです。

今回は、休職についての基本的な知識、休職制度の解説から対応方法までを分かりやすく説明します。

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この記事でわかること(目次)
  • 正しい休職対応のススメ
  • 休職の意味を正しく理解していますか?休職について総復習
  • 休職対応を間違うとトラブルの元に・・・正しい休職対応の進め方
  • トラブルに遭わないために…休職対応3つの注意点
  • まとめ
  • 休職者対応に役立つ資料をご用意しています
  • 休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    休職の意味を正しく理解していますか?休職について総復習

    「休職=会社を休むこと」ですが、「休業」や「休暇」、「欠勤」との違いについて正しく説明できますか?「そんなことは常識」と思った方もいるかもしれませんが、ここでもう一度休職の制度についておさらいをしていきましょう。

    休職制度は義務ではない!?休職制度を設けるメリット

    休職とは、「従業員が労務提供をできなくなった」、あるいは「働くには不適当な理由が生じた場合に、会社が労務提供の義務を免除、または拒否すること」です。就業規則に基づき、会社からの命令もしくは労働者の自己都合による申し出により行われます。労働契約は結ばれたままなので、休職期間中の健康保険料や厚生年金保険などの社会保険料は負担しなければいけません。

    よく多くの方が「休職制度は法律で定められた義務だ」と誤解されます。

    実は休職制度は労働基準法やその他の法令で定められた制度ではありません。会社によって休職制度を設けるか設けないかの判断は自由です。しかし、いったん就業規則に休職制度を定めると、労働契約の一部となるので、会社は休職制度を適用することを義務付けられます。

    では、なぜ多くの会社が休職制度を設けているのでしょうか。その理由は、会社にとって2つのメリットにつながるからです。

    会社が休職制度を設ける一つ目のメリットは、「退職を予防」できることです。休職制度があることで、貴重な人材の流出を防ぐことができます。病気やケガにより一時的に働けなくなった状態でも休職制度があればその期間だけ休み、回復したら職場復帰できるというメリットがあります。休職制度がなければ、せっかくの貴重な人材が辞めなくてはならず会社にとってもマイナスです。休職制度は、人材の定着という面でもとても重要な制度といえます。

    二つ目のメリットは、「退職への猶予期間」とできることです。多くの会社では、就業規則に「病気やけがを理由とした勤怠不良」は解雇事由となると規定されています。そのため、会社は私傷病のために就労できなくなった従業員を解雇することが可能です。しかし、いざ実際に解雇したいとなっても、労働契約上で従業員の職種や業務内容が限定されていない場合、他の職種や業務への配転を検討しなければ不当な解雇とみなされて、労使間のトラブルにつながるケースもあります。そこで、休職制度を設けることで、休職期間内で復帰できない場合は自然退職とすることができ、トラブルを防止できます。

    休職の種類は大きく5つ

    一言で「休職」と言っても、その種類はさまざまです。代表的な休職の種類5つとそれぞれの内容について確認していきましょう。

    1.私傷病休職

    労働者の個人的な業務外事由による病気やケガによって休職する場合のことをいいます。賃金については、会社の方針によって異なりますが、基本的には労務提供をしていないので支払い義務はありません。

    2.自己都合による休職

    病気やケガ以外の、家事やボランティア参加、自己啓発、留学、研修参加など、従業員の私的な都合による休職です。会社によって認めるかは自由に決めることができ、賃金の支払い義務もありません。

    3.組合専従休職

    労働組合員である労働者が雇用関係を維持したまま組合業務に専従する際の休職です。組合専従者に対して、使用者である会社が賃金を支払うことは不当労働行為として禁じられているため賃金の支払い義務はありません。

    4.出向休職

    従業員が出向元と雇用関係を維持したまま、グループ会社や関連会社に出向する「在籍出向」の際に出向元では休職という扱いをします。賃金については在籍出向の場合、出向社員は出向元、出向先のどちらとも労働契約を結んでいるので、どちらも出向社員に支払うことは可能です。出向元と出向先の出向契約において、出向社員が働いた分の賃金をどちらが支払うのかを決めます。

    5.公職就任休職

    従業員が、国会議員、地方議員、知事、首長など公職について業務ができない場合の休職です。賃金の支払い義務はありません。

    休業・休暇・欠勤はどう違うの?

    同じ会社を休むという意味合い「休業」「休暇」「欠勤」とはどう違うのでしょうか。混同されやすい用語との区別をきちんとつけて使い分けをできるようにしましょう。

    (1)休業

    休業は、従業員には働く意思や能力があるにも関わらず、会社側の特別な事情または従業員側のやむを得ない事情により働くことができない場合のことを言います。例えば、会社側の都合というと業績悪化や災害により会社の操業ができない状態です。従業員側のやむを得ない事情というと、産休や育休、看護・介護休業などがあります。休職との違いは、大まかにいうと、休職は従業員の個人的な都合による休み、休業は会社都合または制度による休みと区別されます。

    賃金については、会社側の都合であれば、平均賃金の60%以上の休業手当を支給することが労働基準法で規定されています。制度の利用であれば、基本的に会社側に賃金の支払い義務はありません。

    【代表的な休業の種類】


    労働災害による休業

    ・業務災害に起因する病気やケガによって休職する場合は、1日分に対して平均賃金の6割以上の休業補償を支払うこととなっています。
    ・通勤災害に起因する病気やケガによって休職する場合は、休職期間中の賃金の支払い義務はありません。
    産前産後による休業(産休)
    ・産前6週間(多胎妊娠では14週間)以内、産後8週間以内の場合(ただし産後6週間経過していて、女性従業員が請求し医師が支障はないと判断した場合はOK)は産前産後休業を取得させなければなりません。
    ・賃金の支払い義務はありませんが、休職者が健康保険の被保険者である場合は出産手当金が支払われます。
    育児による休業(育児休業)
    ・育児のために1歳を満たない子を持つ従業員が請求した場合は、育児休業を取得させなければなりません。
    ・賃金の支払い義務はありませんが、休職者が雇用保険の被保険者である場合は育児休業給付が支払われます。
    介護による休業(介護休業)
    ・要介護状態にある家族を介護する従業員が請求した時には、介護休業を取得させなければなりません。
    ・賃金の支払い義務はありませんが、休職者が雇用保険の被保険者である場合は介護休業給付が支払われます。

     

    (2)休暇

    休暇とは、もともと労働義務があったものの、一定の理由により労働義務が免除された日のことを言います。代表的な例としては有給休暇があります。

    労働義務が免除されずに働いたことになるので、休日労働としての割増賃金は発生しません。ただし、就業規則に、休暇に働いた場合は休日労働としての割増賃金を支払うとする記載があれば、それに従います。

     

    (3)欠勤

    欠勤とは、従業員の事情により労働義務のある日に休むことです。労働契約の不履行となるので欠勤日の賃金は支払い義務がありません

    休職対応を間違うとトラブルの元に・・・正しい休職対応の進め方

    休職対応をする際にはいくつか注意点があり、間違った方法で行うと後々の労使間のトラブルに発展してしまう可能性もありますので気を付けましょう。休職開始から休職中(復職まで)の対応は大きくSTEP1~STEP4まであります。それぞれの段階で具体的に何をすればよいのか確認していきましょう。

    STEP1:従業員から診断書を受け取る

    主治医からの「休職を要する」という診断書を受け取ったら、原則翌日から休職させるようにしましょう。「休職を要する」という医師からの診断書は、「これ以上働かせたら心身の健康障害が起きうる」という重要なエビデンスです。もし会社が自己判断で適切な対応をとらなかった場合、会社責任(労働契約法第5条安全配慮義務)を問われる可能性もあります。引継ぎのために、数時間や数日だけでも出社をしてもらいたいという状況はわかりますが、基本的にはNGです。本人が引継ぎのための出社に同意をしている場合、主治医に「●月●日より休職を要する」と日付を指定して診断書を書いてもらう方法も一案としてありますが、原則としては出社させずに診断書に従って休職させましょう。

    STEP2:休職の手続きをする

    休職に入る際に、休職届に休職開始日や休職中の連絡先を明記してもらうようにしましょう。また、休職期間や社会保険料の取り扱い、休職中の連絡事項などについて明記した書面を渡すようにしましょう。休職に入る時は、思考能力が低下している状態であることが多いため書面でエビデンスを残しておくことをお勧めします。

    翌日から休職させるためにも休職手続きに必要な書面は、事前に用意しておくようにしましょう。

    STEP3:休職中は月1~2回連絡を

    休職中は、会社の窓口となる人を1人決めて、月1~2回の頻度で連絡を取るようにしましょう。連絡を取る際は、メールやチャットではなく、電話で直接話して様子を確認する方がいいでしょう。

    現在の体調や生活リズム、通院状況、主治医からのコメントなどを確認します。

    ここで注意することは、同僚や上司など部署の人からの連絡は控えることです。会社の人から連絡が来ると、仕事の事を気にしてしまい療養に専念できなくなる可能性があります。業務の事で聞きたいことがあったとしても、できる限り休職期間中に連絡を取ることは控えてもらい現場から完全に切り離すようにしましょう。

    STEP4:復職可能の診断書が出たら復職判定面談を設定する

    心身の状態が回復し、主治医から復職可の診断書が提出されたら、産業医による復職判定面談を実施します。主治医の診断書と産業医の意見をもって復職とするか否かは会社が最終判断を下していきます。

    トラブルに遭わないために…休職対応3つの注意点

    休職対応を進めていく中で、トラブルに発展さないために以下の3つの注意点に気を付けていきましょう。

    1:診断書が提出されたら原則翌日から休職に入らせる

    診断書が提出されたのにも関わらず、放置していたり、「引継ぎがあるから・・・」と翌日以降も働かせていたりした場合、前述の通り、何かあった際に会社責任を問われる可能性があります。実際に過去の事例として、「会社で休職を認める判断が遅れたこと」がうつ病悪化の原因であるとして会社側が損害賠償の支払いを命じられたケースがあります。診断書を受け取ったら必ず翌日から休職させるようにしましょう。

    2:就業規則の休職に関する解釈を休職者とすり合わせておく

    特に休職期間満了までに復職できなかったときの扱いについては、本人の認識とズレがないように説明しておかなければトラブルになる可能性が高いです。過去にあった実際の事例として、休職期間について就業規則の解釈を誤って説明したことが原因の1つとなって、会社が行った解雇が不当解雇と判断され損害賠償の支払いを命じられたケースがあります。就業規則の解釈についてはきちんと把握し、休職者と認識のズレがないようにしておきましょう。

    3:休職中の連絡先を聞く際は複数に

    休職中に連絡が取れなくなってしまうケースがたまにあります。休職に入る際には、療養先や家族など複数の連絡先を聞いておくようにしましょう。

    休職に入る前に最低限聞いておきたい内容をフォーマットにまとめました!
    よろしければご活用ください。

    ※その他、診断書の保管方法や面談での注意点など休職時の注意すべき対応について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。突然、「休職を要する」診断書が出た、さてどうする?

    まとめ

    休職制度を含め、休職に関する基礎基本について解説してきました。繰り返しになりますが、「休職を要する」という診断書が提出されたら必ず翌日から休職させるようにしましょう。休職期間中は、療養に専念できるように会社の人からの頻回な連絡は控え現場と切り離すことが大切です。また、就業規則の休職に関する事項の解釈については事前にしっかり把握し、休職者と認識の相違がないようにしておきましょう。そのためにも書面でエビデンスを残すことがポイントです。ご不明な点がある場合や悩んだ際は、抱え込まずに産業医や会社の社労士、弁護士に相談し適切に対応できるようにしていきましょう。

    休職者対応に役立つ資料をご用意しています

    今回のコラムでご紹介した内容を実践できる、簡易版 休職中の連絡フォーマットをご用意しました。自社用にアレンジして、ぜひご活用ください。

    休職者対応に関する課題はエリクシアで解決!

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    ※お問い合わせ内容や地域によってはご希望に添えない可能性がございます。 あらかじめご了承ください。 ※産業医提供事業者の方は問い合わせをご遠慮ください。

    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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