産業医とは?産業医の役割と8つの仕事内容

産業医の役割と8つの仕事内容

産業医って?初めて選任する前に知っておきたい基礎知識

産業医を初めて選任するときは、「産業医っていったい何をする人なの?」「なぜ選任する必要があるの?」「主治医との違いは?」など多くの疑問が湧いてくるかもしれません。そういった、よくある疑問を含めて産業医を選任する前に知っておきたい基礎知識についてまとめました。産業医の検討を始める前に産業医の役割や仕事内容を知っておけば、あなたの会社に合う産業医を選ぶヒントになります。ぜひ最後までお読みください。

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この記事でわかること(目次)
  • 産業医って?初めて選任する前に知っておきたい基礎知識
  • 産業医とは?
  • 嘱託産業医・専属産業医はどう違う?
  • 産業医が行う主な8つの仕事内容
  • まとめ
  • 初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    産業医とは?

    産業医とは「事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師」のことです。常時50名以上の労働者が働く事業場では、産業医を選任することが義務づけられています。(労働安全衛生法第13条)

    産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に規定されており、「医学に関する専門的知識を必要とするもの」と定められています。具体的には、衛生委員会への参加職場巡視健康診断結果確認や、健康相談ストレスチェック高ストレス者への面談過重労働者面談メンタル不調者への状態把握面談など、産業保健や労働衛生の観点から、さまざまな活動を行います。このように、産業医の要件や職務、選任人数などは労働安全衛生法に基づいて決められています。さらに詳しくみていきましょう。

    産業医の役割とは?

    産業医の役割は、病院の医師のように診察や治療を行う事ではありません。産業医は事業場における労働者の健康の保持・増進に努め、衛生管理者とともに職場環境管理を行い、労働と健康の両立のために、専門的な立場から指導・助言をすることを任務としています。つまり従業員の心身の健康状態や労働衛生を把握した上で会社に「こうしておいた方がいいよ」と助言する存在です。会社と従業員の間に立って、本人の健康状態や職場状況から、一番いい方法を模索する役割で、言うならば第三者視点で業務を行う「コンサルタント」というイメージです。

    近年は、労働者の健康を守る3大管理(健康管理・作業管理・作業環境管理)の中でも、健康管理の分野で産業医に期待される役割が増しています。一般的な労働災害を予防する活動だけではなく、メンタルヘルス問題や、過重労働管理など、リスクマネジメントコンプライアンスの観点で産業医の意見が求められることが多くなりました。健康経営に代表されるように、会社の生産性向上のためには従業員の健康は欠かせません。そのため、専門的な立場から従業員の健康や職場環境を見ることができる産業医の存在はとても重要となっています。

    産業医の要件:医者ならだれでもいいの?

    産業医は医師であれば誰でもなれるわけではありません。

    産業医は医師免許のほか、日本医師会が主導する日本医師会認定産業医制度に基づいて認定を取得した者が産業医の業務をおこなうことができます。産業医になる要件は労働安全衛生規則第14条2項に規定され、以下のいずれかの要件を満たす者とされています。

    <産業医になるための要件>
    Ⅰ.厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
    Ⅱ.産業医の養成課程を設置している産業医科大学、その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
    Ⅲ.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
    Ⅳ.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

    産業医と主治医はどう違う?

    産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に規定に基づいて行われます。主治医は怪我や病気の治療を行いますが、産業医はたとえ医師の資格を有していたとしても、診療所を併設していない限り、医療行為を行うことはありません

    産業医が事業場にいる場合、「体調を崩したときやケガをしたときに産業医に診てもらえるの?」と思われるかもしれませんが、産業医の業務内容は、病院にいる医師がおこなう診療とは異なることに注意しましょう。

    産業医と病院の主治医との違い
    ■主治医
    ・対象:患者
    ・活動場所:医療機関、健診機関など
    ・根拠法令:医師法
    ・職務内容:怪我や病気の検査・治療
    ・医療行為(診断・治療):行う(保険診療、自由診療)

    ■産業医
    ・対象:労働者
    ・活動場所:事業場
    ・根拠法令:労働安全衛生規則第14条
    ・職務内容:労働者の健康障害を予防し、心身の健康保持・増進を目指した活動
    ・医療行為(診断・治療):行わない

    ※産業医と主治医の違いについては、下記の記事でも解説しています。
    5つの視点で考える 産業医の役割と主治医との違い

    産業医の選任人数は?

    常時50名以上の労働者が働く事業場では、産業医を選任することが義務づけられています。(労働安全衛生法第13条)。

    ここで言う「労働者数」は事業場単位で考える必要があります。

    事業場の労働者数  産業医の選任人数
    0~49人            : 産業医は必要なし
    50~999人     : 1名以上(嘱託可)
    1000~3000人  : 産業医1名以上(専属)
    3001人以上      : 産業医2名以上(専属)

    なお、事業場の労働者数が常時1000人以上または、一定の有害業務に常時500名以上の労働者を従事させる事業場は、専属産業医が必要となります。

    嘱託産業医・専属産業医はどう違う?

    次に、嘱託産業医と専属産業医の違いを見ていきましょう。 嘱託産業医と専属産業医の違いは大きく分けて、選定要件、働き方、給与、3つの点で大きく変わります。その違いについて解説していきます。

    嘱託産業医

    嘱託産業医とは、月に1~2回訪問し産業医業務を行う産業医です。1カ月に訪問する回数は訪問が必要な事業場数や、契約内容によって異なります。日本の産業医の8割程度がこの嘱託産業医と言われています。普段は他の医療機関や開業医として働いていることが多く、労働者が常時50人以上999人以下の事業場では嘱託産業医の選任が基本となっています。
    (※999人以下であっても一定の有害業務に常時500名以上の従業員を従事させる事業所では専属産業医の選任が必要です。)

    嘱託産業医の月額報酬の相場は事業場の規模や立地、産業医の経験などによって様々です。

    <産業医報酬基準額(ストレスチェック時の報酬は含まない)>

    50人未満 :75,000円~
    50~199人:100,000円以上
    200~399人:150,000円以上
    400~599人:200,000円以上
    600~999人:250,000円以上

    ※出典:公益社団法人日本橋医医師会 産業医保健部委員会 産業医報酬基準額について(平成28年4月) 

    専属産業医

    専属産業医は特定の事業場に常勤し、週3~5日ほど勤務する産業医です。事業場に常勤しており、企業の健康管理室に所属していることが多いです。労働者が常時1000人以上、または一定の有害業務に従事している労働者が常時500人以上いる場合は専属産業医1名の選任が定められています。労働者が3000人を超える大規模な事業場では専属産業医が2名必要です。専属産業医の報酬は、経験年数や勤務日数、事業場の規模、立地などで変動します。

    以下が平均的な専属産業医の年俸です。

    <産業医報酬基準額>

    勤務日数   報酬目安
    週3日  : 600~800万円
    週4日  : 800~1500万円
    週5日  : 1500万円~

     

     

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    産業医が行う主な8つの仕事内容

    では、実際に産業が具体的にどんな仕事をしているのか、産業医の仕事の内容について具体的に見ていきましょう。産業医の仕事内容(産業医の職務)については労働安全衛生規則第14条第1項で定められています。

    ◆産業医の職務

    1. 健康診断の実施とその結果に基づく健康を保持するための措置をする
    2. 面接指導と必要な措置の実施、これらの結果に基づく労働者の健康保持のための措置をする
    3. 心理的負担の程度の把握をするために検査の実施と面接指導、その結果に基づく労働者の健康保持に関する措置をする
    4. 作業環境の維持管理に関すること
    5. その他労働者の健康の保持増進を図るための措置をする
    6. 作業管理に関すること
    7. 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
    8. 衛生教育に関すること
    9. 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置をする

    これらを具体的な活動に落とし込むと、産業医の仕事は大きく8つの仕事に分けられます。

    1.衛生委員会の出席

    衛生委員会とは、従業員が心身ともに健康で活き活きと仕事ができる環境を整えるために、経営層や人事・総務、現場の社員が議論をする委員会です。会社の課題を共有し具体的な解決策を話し合います。50人以上の従業員がいる事業所は月1回以上開催することが義務付けられています。産業医は衛生委員会に参加し、専門的な立場から議論に対する意見を述べることや、議題を共有します。

    2.職場巡視

    職場巡視は、従業員が働く作業環境を見て回り、安全衛生上の問題点をチェックし、改善していくことを目的におこないます。50人以上の従業員がいる事業所では、産業医は原則1回以上の職場巡視の実施が定められています(※)。産業医は、事業所を見て回り、作業環境の衛生面や防災面のチェック、現場の意見を聴取しフィードバックしていきます。

    ※平成29年の労働安全衛生規則の改正により、産業医の職場巡視は一定条件のもと2か月に1回の実施も認められるようになりました。2カ月に1回の巡視とするためには、事業者の同意並びに、衛生管理者が行う巡視の結果及び(安全)衛生委員会の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとした情報が、産業医に提供されていることが条件となります。(安全衛生規則第15条)

    3.衛生教育

    衛生教育は、従業員の心身の健康維持・増進のためにおこなわれます。産業医は衛生委員会や現場において、健康管理や衛生管理についての講話をします。例えば、季節で流行しやすい感染症や衛生管理に関係するホットな話題、法律の改定など、会社や従業員が知っておくべき話題について共有します。

    4.健康診断結果の確認

    健康診断実施後は従業員の健康保持のために必要な措置について、医師から意見を聞くことが義務付けられています。そのため会社は健康診断の結果を回収し、産業医の確認をもらう必要があります。産業医は健康診断結果を一人分ずつ確認し、就業面・医療面それぞれの観点で判定を行います。会社は産業医の判定に基づいて、今すぐ治療を必要とする人に病院受診を促すことや、場合によっては就業制限や就業禁止といった対応が必要になることがあります。

    5.健康相談、健康指導

    健康相談や健康指導は従業員が適切な指導や助言を受けることで課題解決を図る目的でおこなわれます。産業医は面談を通じて従業員に対して心身の健康の維持と促進に向けたアドバイスや指導をします。例えばメタボリックシンドローム予防や糖尿病予防のための健康指導があります。

    ※産業医に相談できる内容については下記の記事で解説しています。
    健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンル

    6.長時間労働者に対する面談指導

    長時間労働者に対する面談指導は、長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害発症のリスクが高まった労働者について、その健康の状況を把握し本人への指導を行うとともに、その結果を踏まえ必要な措置を講ずることを目的としています。時間外労働が80時間を超えた労働者で希望がある場合の面談や、100時間を超えた労働者への面談を行います。

    7.ストレスチェックにおける高ストレス者への面談指導

    ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票に従業員が回答し、それを集計・分析することで自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べるものです。従業員が50人以上いる事業所では毎年1回実施することが義務付けられています。産業医は、ストレスチェックの高ストレス者でかつ希望があった場合は面談指導を行います。また、従業員の同意の範囲で、面談で聴取した内容のうち、労働者の安全・健康確保のために会社へ伝える必要がある情報を会社側へ提供します。産業医からの意見によって会社は適切な措置を講ずることができるようになります。

    8.その他、面談指導

    産業医面談とは、従業員の心や体の健康に問題がないかを実際に話をして確認するためのものです。健康相談や高ストレス面談、過重労働面談以外にも、産業医による面談には以下のようなものがあります。

    ◆産業医による面談の種類
    -休職者、メンタル不調者などへの状況把握面談
    -復職判定面談
    -復職後フォロー面談
    -新入社員面談
    -本人希望面談

    本人の希望があった場合に限らず、会社が必要と判断する人に対して面談し、状況の確認や助言を行います。

    以上が、産業医が行う主な8つの仕事内容です。

    まとめ

    産業医とは

    事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師です。産業医は病院の医師とは異なり、診療所を併設していない限り、医療行為(病気の検査や治療・処方等)は行いません。
    会社と従業員の間に立って、第三者視点で業務を行う「コンサルタント」というイメージが近い存在です。

    産業医の主な仕事内容は大きく分けて8つ

    衛生委員会の参加、職場巡視、衛生教育、健康診断結果の確認、健康相談、高ストレス者面談指導、長時間労働者への面接指導、その他面談業務 など多岐にわたります。(労働安全衛生規則第14条第1項)

    50人超えたら嘱託産業医、1000人超えたら専属産業医が基本※

    労働者が常時50人以上999人以下の事業場では嘱託産業医を選任します。 労働者が常時1000人以上で専属産業医を選任が必要となります。
    ※999人以下でも、一定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では専属産業医の選任が必要です。

    今回は産業医の役割や仕事内容について説明しました。会社はその役割をしっかりと把握したうえで、労働者が健康かつ快適に仕事ができるよう、産業医と連携していくことが重要です。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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