健康相談・メンタルヘルスだけじゃない!産業医が対応できる5つの相談ジャンルとは?

産業医に「どこまで相談していいのか」と悩むことはありませんか?

産業医は医師であることから、働く人々の健康に関する相談ができるイメージはなんとなくあるかと思います。一方で、何をどこまで産業医に相談してよいのか判断に迷い、他に相談のあてもないので、「こんなこと、産業医に相談してもよいの?」と悩んでしまったことはないでしょうか。今回は、そんなお悩みを解決すべく、産業医が対応可能な相談内容を5つのジャンルに分けて、具体的な例を挙げながら説明していきます。

初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 産業医に「どこまで相談していいのか」と悩むことはありませんか?
  • 産業医の職務からみる基本的な相談範囲
  • 産業医に相談してOK?意外と知らない相談範囲
  • 産業医に相談したことは関係者に知られる?
  • まとめ
  • 初めての産業医導入に関する課題はエリクシアで解決!
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    産業医の職務からみる基本的な相談範囲

    そもそも産業医とは、事業場において従業員が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のことです。産業医の職務概要は、「会社の衛生(健康)全般に関する意見およびアドバイス(指導)をすること」であり、例えば下記があります。

    ■産業医職務の例

    ・健診実施や健診結果に基づく対応 (例:保健指導や就業上の措置に関する意見など)
    ・ストレスチェック実施および結果に基づく対応 (例:高ストレス従業員への保健指導や措置に関しての意見など)
    ・過重労働者への保健指導や措置に関して意見
    ・(安全)衛生委員会へ出席、労働災害防止策に関する助言
    ・作業環境の維持管理や作業管理 (例:職場巡視の実施、有害業務による健康障害の防止策に関する助言など)
    ・健康教育や健康相談
    ・衛生教育 など

    これら職務の範囲にあり、産業医へ相談可能な具体例を、①衛生管理、②健康管理、③過重労働管理、④メンタルヘルス対策、⑤その他の5つのジャンルに分けて考えていきましょう。

    ※産業医の仕事内容について解説している記事もあります。
    産業医とは?産業医の役割と8つの仕事内容

    その1:衛生管理に関して相談可能なこと

    会社から産業医への相談例

    ・(安全)衛生委員会構成メンバーって誰が必要?
    ・衛生委員の選定方法はどうすればいい?
    ・衛生委員会の議題設定や運営方法、議事録の書き方や周知の方法は決まっている?
    ・より活発な議論を行うためのポイントはある?
    ・委員会をオンラインで行う場合の注意点はある?
    ・労災防止対策ってどうすればいい?
    ・会社としての感染症予防対策はどうしたらいい? など 

    社員から産業医への相談例

    ・暑い・酸素が薄い・換気不足など作業環境で困っている
    ・個人の感染症予防対策ってどうすればいい?
    ・有害物質取扱い業務上の注意点は? など

    その2:健康管理に関して相談可能なこと

    会社から産業医への相談例

    健診項目の種類、定期健康診断や特殊健康診断の受診対象、有所見者の就業上の措置に関して、個人情報の扱い方、健診結果の保管方法、労基署へ提出する結果報告書の書き方、事後措置票配布対象者、事後措置票回収に関するフローづくり、感染症の出勤停止/自粛期間、ストレスチェックの実施方法、など

    社員から産業医への相談例

    健診後の相談(コレステロールが高いなど)、生活習慣改善の方法、受診の目安(受診するか迷っているなど)、持病に関して、治療と仕事の両立方法、頭痛など諸症状への対処法、など

    その3:過重労働管理に関して相談可能なこと

    会社から産業医への相談例

    会社の状況にあった疲労蓄積度チェックリストづくり、疲労蓄積度チェックリスト配布対象者の選定法、面談対象選定法、面談設定方、会社全体としての過重労働対策、(安全)衛生委員会での共有方法、裁量労働制や管理監督者に対する時間管理方法、リモート勤務者の時間管理の方法、など

    社員から産業医への相談例

    時間管理や業務環境に関する悩み、残業時間が増えてきた時の自宅での過ごし方の工夫やプライベートでのストレス発散法、生活リズムの整え方、過重労働とメンタル状態の関係性に関して、など

    その4:メンタルヘルス対策に関して相談可能なこと

    会社から産業医への相談例

    休職/復職時のフロー整備(書類の作成方法など)、復職プログラムの作成や円滑な運営方法、不調者早期発見フローの仕組み作り、精神疾患を持つ社員への対応、メンタル不調が疑われる社員への対応、会社全体でのメンタルヘルス施策や研修実施について、主治医からの診断書の扱い方、社内での個人情報取り扱い方法、など

    社員から産業医への相談例

    ストレスが溜まった時の対処法(セルフケアなど)、職場の人間関係の悩み、家庭内での悩み、パワハラかもしれないと感じた時の対応法、不眠症や自律神経失調症状(頭痛や動悸、眩暈など)に関して、心療内科など受診の目安、不調そうな同僚や上司・部下に対する対応法、復職直後の部下への対応法、など

    その5:その他に関して相談が可能なこと

    上記4つのジャンルに当てはまりそうな気がするがわからないといった、様々な要素が絡まった複合的な問題が実際の現場では発生しているかと思います。例えば、勤怠不良者に対する会社対応や業務不履行に対する会社対応、従業員同士のトラブルに対する会社対応などなどが挙げられます。それらを次に説明していきます。

    産業医に相談してOK?意外と知らない相談範囲

    実際の現場では、ただのメンタル不調だけではなく、その他の要因が絡み問題が複雑化しているケースも少なくありません。労働法や雇用に関することは、弁護士・社労士に相談すべき案件となりますが、従業員対応を行う場合の会社側の注意点や、上司として対応に気を付けるべきことは何かといった内容は、産業医が相談を受けることがあります。

    会社から産業医への相談例
    ・依存症(アルコール依存など)、発達障害、パーソナリティ障害をもつ採用者や社員への対応
    ・過度な被害妄想を持つ社員や幻聴・幻視を訴える社員への対応
    ・体調不良で欠勤を繰り返すも受診/休職をしたがらない社員の対応
    ・自傷行為をほのめかす社員への対応
    ・休職中の社員対応
    ・復職後欠勤が多い社員への対応
    ・ハラスメントを訴える社員への対応
    ・急に連絡が取れない社員への対応
    ・会社でのハラスメント施策に関して
    ・職場や同僚に対して攻撃的な社員への対応
    ・派遣社員に対する派遣元や派遣先の対応範囲や対応方法
    ・障害者雇用で雇用した社員の対応 など

    一方、従業員側からの相談として、下記のような相談も対応可能です。

    社員から産業医への相談例
    ・在宅勤務でオンオフがつけづらい時の工夫
    ・部下のマネジメント法について
    ・ワークライフバランスのとり方
    ・発達障害やグレーゾーンに関して(従業員自身、もしくは部下や同僚など)
    ・ハラスメントに関して など

    産業医の相談範囲には思えないような相談内容もあったかもしれません。シンプルに気が合わないといった人間関係の悩みだけではなく、メンタル疾患や障害を抱える従業員とのトラブルの場合は、適切な知識を持って理解することが大切です。そのため会社と社員の間で収まらない解決が難しい問題や、会社として弁護士や社労士に相談するかどうか、そもそも誰に相談したら良いかわからない問題については、専門知識を持つ産業医も連携して一緒に考えていくことで、適切な対応を行えることが多くあります。なお、従業員のプライベートなことに関して、産業医は積極的に関与しませんが、「プライベートに関する相談」や「プライベートに起因したことで会社の業務に影響があり、その対応に困っている」といった相談は受けることもあります。

    産業医に相談したことは関係者に知られる?

    産業医の守秘義務について

    産業医は2つの法律によって守秘義務が課せられています。一つ目は労働安全衛生法です。同法105条では、健康診断や面談指導の実施に関する事務を取り扱うものに対する守秘義務があり、健康診断や面談指導を通して知りえた従業員の秘密を漏らしてはならないとされています。違反した場合、6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金となります。

    労働安全衛生法 第105条原文(健康診断等に関する秘密の保持)

    第65条の2第1項及び第66条第1項から第4項までの規定による健康診断、第66条の8第1項、第66条の8の2第1項及び第66条の8の4第1項の規定による面接指導、第66条の10第1項の規定による検査又は同条第3項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。

    また、産業医は、一般の医師同様に守秘義務があります。産業医は医師免許に加えて産業医になるための研修を受けている“医師”なので、秘密漏示に関する刑法第134法も適用されています。

    刑法 第134条原文(秘密漏示)

    医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

    以上より、業務上知りえた従業員の情報を従業員本人の同意なく人事や第三者に伝えてはいけません。ただし例外として下記があります。

    例外事項

    ・法令に基づく場合
    ・生命に関わる場合(例えば、従業員が自傷行為に及ぶ可能性が高い時)
    ・伝染病など直ちに対応しなければ他の従業員に健康被害が生じる危険がある場合
    ・会社が安全配慮義務を遂行するためには必要と判断された情報

    言い換えると、生命に関わることや、他の従業員への健康被害が生じる可能性、会社側の安全配慮義務違反の恐れがない限り、産業医は本人の同意なしで人事や現場上司といった第三者へ情報を共有することはできません。なお、情報を提供された会社側としても、労務担当の中で、誰がどの情報を扱うことができるのかを決定し、健康情報取扱規程を作成したうえで、情報を適切に扱うことが重要です。

    まとめ

    以上が産業医に相談できる具体的な内容でした。産業医に相談できることは、「産業医の職務である会社の衛生(健康)全般に関する意見およびアドバイス(指導)をすること」とよく言われていますが、やや抽象的なのでどこまで相談して良いのかわかりにくかったと思います。実際、産業医の対応範囲としては、(安全)衛生委員会・健康診断・ストレスチェックなどの衛生管理体制に関すること全般、個人の健康に関することから作業環境に関して、自分や部下など周囲のメンタル不調に関することから発達障害やハラスメントまで、多岐にわたります。誰に相談してよいかわからない場合も、産業医へ相談することで解決への糸口が見つかったり、解決までは至らなくとも相談先を教えてくれたりすることもあります。弁護士や社労士といった専門家へ相談する一歩手前の領域に、実は会社の困りごとがたくさん生じます。それらの多くは、法的解釈に則った対応だけでは完全解決できず、人間の心理やステークホルダーの調整といった、現場対応がその先に存在します。誰に相談したらよいかわからないことや、産業医へ相談しようか悩んでいることがありましたら、一度産業医へ相談可能か確認してみると良いかもしれません。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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