ヒトは会社の大事な資産!「健康経営」はメリットがたくさん

健康経営とはー企業が取り組むメリットと、注目された背景、準備事項について―エリクシア産業医

健康経営とは?考え方から企業が取り組むメリット、はじめの一歩まで徹底解説!

皆さんは「健康経営」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?近年、健康経営の注目度が高まっているため、一度は耳にしたことがあるという方は多いかもしれません。しかし、「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」「健康経営って本当に意味があるの?」と疑問を持っている方もいるかと思います。

そこで今回は健康経営とはどのようなものなのか、注目された背景メリット進めるうえでの準備など基本的な内容をわかりやすく解説していきます。

この記事でわかること(目次)
  • 健康経営とは?考え方から企業が取り組むメリット、はじめの一歩まで徹底解説!
  • 健康経営とは、ヒトを『資産』として投資をする考え方
  • 健康経営が注目された3つの理由
  • 健康経営はいいことだらけ!?健康経営のメリットとは?
  • 健康経営はじめの一歩
  • まとめ
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    健康経営とは、ヒトを『資産』として投資をする考え方

    健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。

    通常、従業員は人件費という「費用」で計上しますが、健康経営は従業員を「資産」ととらえ、従業員の健康の維持・増進を「投資」とする考え方です。具体的に言うと、従業員のメンタルヘルス等の健康づくりに積極的に取り組むことで、従業員の活力向上業務の効率化を図り、会社全体の生産性の向上を促進します。結果的に、業績向上株価向上につながります。

    この「健康経営」という考え方は、近年注目度が上がっており、取り組む会社が増えています。次の項から健康経営が注目された理由や取り組むメリットなどを解説していきます。

    健康経営が注目された3つの理由

    健康経営が注目される以前までは、従業員の健康問題は経営上の問題とは考えず、従業員個人で解決すべき問題として考えられていました。しかし近年、人口構造の変化社会情勢の変化により経営と従業員の健康は切っても切り離せない問題となりました。限りのある重要な財産である従業員の健康を守ることは、会社経営にとって大きな意義があるのです。健康経営が注目されるようになった理由は様々ありますが、主なものを3つご紹介します。

    理由1:少子高齢化社会に伴う労働人口の減少による生産性への影響

    現在、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は、約3割※1との結果が出ています。既知の通り、日本は少子高齢化社会となっており、生産年齢人口(15歳~64歳)も減少傾向にあります。2070年には2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上との推計も出ています。

    そのような中で、企業が生産性を維持するためには、労働者一人一人の生産性を上げていかなければなりません。

    そのため、従業員が元気に長く働けるようサポートし、生産性を下げる要因の一つである「健康状態」を良好にすることで、会社全体の生産性を維持していく取り組みが求められます。その取り組みとして、いま健康経営が注目されています。

    また今後、労働人口が減少していく中で人手を確保していくために、高齢就業者の活用を増やすことが予想されます。高齢者は健康問題を抱えていることが多いため、生産性維持を目的とした健康配慮は、企業にとってさらに重要となってきます。

    *1内閣府 令和5年版高齢社会白書

    参考:総務省統計局:高齢者の就業

    理由2:人手不足による労働環境と健康への影響

    労働人口の減少による人手不足は労働環境にも大きな影響をもたらしています。「働き方改革」により、時間外労働を減らしていこうとする取り組みが進められている一方で、業種によっては、人手不足の影響で労働者1人あたりの業務量が増加し、時間外労働をせざるを得ない状態も見られています。時間外労働は労働者の心身の負担に影響するだけでなく、健康問題や労働災害の発生リスクも高まると言われています。さらに、時間外労働の常態化は健康状態に影響を及ぼすだけでなく、精神的余力低下に伴う職場雰囲気の悪化、健康状態悪化による従業員の離脱、労働環境の悪評による求職者の減少を招き、やがて業務継続にも影響を及ぼしかねません。労働環境を見直し、事業継続性を担保していくうえでも、健康経営は重要な経営施策の一つとして注目されています。

    理由3:少子高齢化社会における財源の減少と医療費の増加

    医療費の増加は身近に感じにくい課題ですが、医療費は現役世代によって賄われています。そのため必然的に労働人口が減れば、財源も減ることは言うまでもありません。

    その中で現在、医療費が年々増大している状況にあります。医療費を圧迫している原因は、主に高齢化にあります。現状のままでは、財源は減るのに医療費が年々増大し、医療保険制度を支える国や医療保険者の財政がひっ迫し国民皆保険制度の維持が危ぶまれる状況に陥ります。

    健康保険料は会社が半額負担をしていることから、将来的な保険料負担増加の可能性と社会貢献という観点で考えれば、会社にとっても無視できない課題と言えます。

    日本の社会構造的な課題と将来に起こりうる自社への影響を考えた時、従業員の健康課題を単なる「従業員の問題」と切り離すことができない時代に来ています。企業が事業継続していくためには、人材を確保するということだけでなく、確保した人材に長くいきいきと働いてもらえる環境づくりが不可欠である、といった考えを持つ人事担当、経営者が増えたことで、健康経営への関心は日に日に高まっています。では、健康経営に取り組むと具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。

    健康経営はいいことだらけ!?健康経営のメリットとは?

    冒頭で、健康経営とは「ヒトを『資産』ととらえ、従業員の健康の維持・増進を『投資』ととらえる考え方」とご説明しました。では健康経営を推進するとどんなメリットがあるのでしょうか。企業側・従業員側の2つの視点からみたメリットについて確認していきます。

    健康経営を推進するメリット‐会社側

    会社のメリット1:生産性の向上

    健康経営によって、従業員の健康を維持し活力を上げることは、会社全体の生産性の向上につながります。では、逆に従業員の健康がどのような状態であると生産性の低下に影響するでしょうか。少し専門的な話になりますが、生産性を下げる要因とされている従業員の健康状態には2つの視点があります。

    一つ目は、アブセンティーズムと言われるものです。アブセンティーズムとは、従業員のケガや病気により欠勤している状態のことです。欠勤があると、単純に一人分の生産量が落ちてしまいますし、他の従業員の負担も大きくなります。

    二つ目は、プレゼンティーズムです。プレゼンティーズムとは、従業員が出勤していても何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状態のことを指します。例えば、軽めのプレゼンティーズムで、多少無理をすれば出社できるレベルの健康問題でも、それによって業務効率が落ち、短期的に見れば大したことがないレベルでも長期的に見れば多額の損失が出ている可能性もあります。

    健康経営を通じて従業員が心身共ともに健康になることは、アブセンティーズム・プレゼンティーズムの減少をもたらし、健康状態による生産性低下を抑制します。また、健康になり活力が上がれば、仕事へのモチベーション向上や、集中力向上によるエラー減少、業務の効率化、イノベーション創出、人材定着にも貢献するかもしれません。元気な従業員が多くなれば組織全体の活力アップにもつながりさらなる好循環が期待されます。そのため、健康経営を通じて従業員の健康を維持し活力を上げることは、会社全体の生産性向上をもたらすという大きなメリットがあります。

    会社のメリット2:リスクマネジメント

    健康経営の取り組みには、労働災害の防止や過重労働の削減、ハラスメントの防止に関わるものなど様々なリスクへの対策(リスクマネジメント)が含まれています。リスクマネジメントとは、簡単に言うと企業に損失をもたらすような事態を避けるために、あらかじめどのようなリスクがあるかを把握し、対策を立てておくことで、損失の回避または低減を図るプロセスのことです。会社を取り巻くリスクとは、例えば、労働災害、過重労働による過労死、人材流出、セクハラ・パワハラ・マタハラといったハラスメントなどがあります。そのようなリスクが実際に発生すると、従業員には不安を与え、会社も売上の低下や企業イメージの低下など多くのダメージを受けます。リスクマネジメントの観点からも健康経営の取り組みは有効であると言えるでしょう。

    会社のメリット3:医療費の適正化

    健康経営に取り組むことで、健康に問題のある社員の早期発見や早期治療につなげられます。また、従業員自身のセルフケアも促すことで、医療機関への受診率が低下し、会社の保険料負担の削減にもつながることが期待されます。

    会社のメリット4:従業員の定着・離職率の改善

    健康経営の取り組みにより、会社が従業員の健康へ配慮しているという安心感を与えることは、会社への信頼につながります。また、会社への満足度向上にも効果があるため、長い目で見ると従業員が定着しやすくなり離職を防ぐことにもつながることが期待されます。

    会社のメリット5:社会的評価と企業イメージ向上

    健康経営に取り組み、実現していることを社外に周知することで、取引先の会社や休職者、支援者から「従業員を大切にしている会社」とプラスのイメージを持ってもらえます。さらに、健康経営銘柄や健康経営優良法人など健康経営認定制度で選出されると企業イメージが向上し、優秀な人材が集まりやすくなります。

    健康経営を推進するメリット‐従業員側

    従業員のメリット1:業務パフォーマンスが向上する

    自身の健康課題の軽減や解消ができた従業員は、業務へエネルギーを向けることができるため、業務パフォーマンスが向上します。

    従業員のメリット2:ワークライフバランスの適正化

    健康経営には従業員のワークライフバランスの適正化への取り組みが含まれています。ワークライフバランスとは、私生活と仕事の調和を意味し、日常生活の充実が仕事への意欲を高め、仕事がうまくいくとさらに私生活も潤うという好循環を目指したものです。ワークライフバランスの適正化により、健康促進や業務パフォーマンスの向上につながることが期待できます。

    このように健康経営は会社にとっても従業員にとってもメリットが多いものです。長期的な視点でみると健康経営に取り組むことは会社にとっても従業員にとっても大きな意義があるといえるでしょう。

    健康経営はじめの一歩

    ここまで健康経営の考え方や、健康経営が注目されている背景、推進するメリットについて解説してきました。では、ここからは健康経営に初めて取り組む会社向けに、始めるためのステップをご紹介していきます。

    事前準備から始める、健康経営への7つのステップ

    健康経営を一から始めるにあたって何をしていけばいいのでしょうか。7つのステップに分けて解説していきます。

    STEP1:自社の現状把握

    健康経営に取り組む前に、まずは自社の状況を把握することから始まります。現状把握にあたっては、医療保険者と連携することが効果的です。初めて健康経営に取り組む企業は、協会けんぽや健康保険組合が実施する「健康宣言事業」に参加してみましょう。自社の現状把握の具体的な方法や健康宣言事業については、今後別の記事で解説していきます。

    STEP2:「健康宣言」をしましょう

    健康宣言」とは「経営者のメッセージ」です。会社で健康づくりに取り組むこと、なぜ健康経営が必要だと思ったのかを、経営者から従業員にメッセージを出すことがスタートです。経営者自らが健康宣言をすることで、従業員の意識や参加度合いを高める効果があります。また、「健康宣言」を社内外に公表することで、会社に対する社会的なイメージの向上につながります。

    STEP3:担当者を決めましょう

    健康経営の実施を主体的に行う、担当部署や担当者を決めます。ここで決めた担当部署および担当者は、健康経営の取り組みの企画や実行の指揮、各取組みの実行、他部署や外部リソースとの調整連絡窓口の役割があります。また、事業場が複数ある場合は、事業場ごとに担当者を決めます。健康経営の取り組みをより充実させるために、担当者が健康経営アドバイザーの資格を取ったり、産業医や保健師等の外部リソースを活用したりするという方法もあります。

    STEP4:定期健康診断の受診率向上を目指しましょう

    自社の従業員の健康課題や自社にどんなリスクがあるのかを把握するためにも、定期健康診断の受診がとても重要です。健康診断受診率100%を目指しましょう。

    STEP5:法令を遵守できているか確認しましょう

    健康経営において、法令順守は基盤となるものです。労働基準法や労働安全衛生法などの他にも労働者の健康管理上の問題に関連する法律や規則の遵守がしっかりできているか見直します。

    STEP6:自社の課題を抽出しましょう

    自社が抱える健康課題を抽出するにあたっては、「なんとなくこんな課題がありそう」ではなく、根拠のあるデータをもとに課題を割り出していく必要があります。その上で、優先順位をつけて課題に取り組むようにしましょう。

    STEP7:具体的な目標の設定

    STEP6で抽出した課題に対する、具体的な取り組み計画や目標を設定します。具体的な計画や目標設定をする際には、実行可能性や検証・評価が容易かどうかをあらかじめ検討したうえで決めていきましょう。

    STEP1~7までの事前準備ができたら、いよいよ実際に取り組んでいく段階です。

    健康経営の具体的な取り組みについては、下記の記事をご覧ください。
    はじめて健康経営優良法人認定制度にチャレンジする中小企業向け!認定までの道のりを分かりやすく解説

    まとめ

    健康経営とは従業員を「資産」と捉え、従業員の健康管理を「投資」とする考え方です。健康経営に取り組むと、生産性の向上リスクマネジメント企業イメージの向上など様々なメリットがあります。

    健康経営に取り組む前には、まず事前準備として、自社の現状把握や課題の抽出をおこなっていきましょう。また、健康経営の取り組み目標や計画は、実行が可能で、かつ評価が容易なものを設定するようにしましょう。

    もし健康経営に関してお悩みの場合、または衛生管理体制の整備などでお悩みの場合はエリクシアの産業保健チームがお役に立てるかもしれません。お気軽に下記フォームでご相談ください。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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