衛生管理者資格、どちらを取得するべき?1種と2種の違い

労働者が常時50人以上になったら衛生管理者の選任が必要

従業員が50人を超えると、企業には様々な義務が発生します。その義務の一つに衛生管理者の選任があります。衛生管理者は国家資格を持っていなければ選任できないため、社内に資格保有者がいない場合には、誰かが資格を取る必要があります。

今この記事を読んでくださっている方の中には「職場で急に衛生管理者の資格を取るように言われたけど、どんな資格なのかよく分からない」とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方のために、今回は衛生管理者の基本情報と第一種・第二種の違いについてご説明していきます。記事の最後には第一種と第二種どちらの衛生管理者資格を取得するか選ぶポイントにも触れていますので、迷っている方はぜひ最後までお読みください。

なお、衛生管理者が急に不在になってしまった場合の対応については、下記記事で詳しく触れていますので、こちらもご参照ください。

衛生管理者が不在になってしまった!どうすればいいの?

この記事でわかること(目次)
  • 労働者が常時50人以上になったら衛生管理者の選任が必要
  • そもそも衛生管理者とは?
  • 自社に必要なのは第一種?第二種?違いを理解!
  • あなたが狙うべき資格はどっち?選ぶポイント
  • まとめ
  • 衛生管理体制の均質化に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    そもそも衛生管理者とは?

    衛生管理者は、労働安全衛生法によって定められている国家資格です。どんな人が取得できるのか受験資格と、実際の職場における衛生管理者の業務について確認しておきましょう。

    資格を取るために必要な受験資格

    衛生管理者の受験資格はいくつかありますが、代表的な受験資格の3つをご紹介します。いずれかに該当すれば、受験できます。

    事業者証明書は、労働衛生の実務経験の確認のために必要な書類です。「労働衛生の実務経験」と聞くと難しく感じますが、デスク周りの整理整頓やオフィスの清掃も労働衛生の実務にカウントされるため、社会人であればほとんどの人が経験していると言えるでしょう。
    その他の受験資格の詳細については、公益財団安全衛生技術試験協会のWebページをご参照ください。

    衛生管理者は人事や総務だけでなく、どんな方でも資格があればなれますが、産業医との連絡窓口になることが多く、人事や総務の担当者が事業場の衛生管理者になるケースが多いです。ちなみに、衛生管理者として選任された担当者は衛生管理の業務だけを行うのではなく、他の仕事と兼任しながら進めていく場合がほとんどです。

    衛生管理者の職務

    衛生管理者の職務は、総括安全衛生管理者の職務とされる労働安全衛生法第10条第1項の業務のうち、衛生に係る技術的事項であると、厚労省の「職場のあんぜんサイト」で解説されています。

    [1]健康に異常がある者の発見及び処置
    [2]作業環境の衛生上の調査
    [3]作業条件、施設等の衛生上の改善
    [4]労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
    [5]衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
    [6]労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
    [7]その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置
    [8]その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等

    では、具体的に何をするかと言うと下記のような職務を行います。

    職場巡視

    少なくとも週1回作業場の巡視を行い、設備や作業方法、衛生状態に有害の恐れがあるときは、「直ちに、労働者の健康障害を防止するために必要な措置を講じなければならない」とされています(労働安全衛生規則第11条)。その場で改善できるものは衛生管理者で解決し、衛生管理者のみで解決困難な事案については、衛生委員会に持ち込んで解決に向けて話し合いを行います。

    衛生委員会出席

    衛生委員会のメンバーとして、事業者が衛生管理者を指名するよう定められています(労働安全衛生法第18条)。職場巡視で見つかった課題や衛生管理者のみで解決することが困難な事案については、衛生委員会に持ち込んで話し合います。その他にも、衛生委員会は過重労働や労働災害、健康診断、ストレスチェックなどについて報告や議論を行う場のため、衛生管理の専門家として職場の課題について意見を出すことが求められます。

    健康管理

    健康診断の実施や事後措置対応、健康診断結果報告書の労基署への提出などの業務を行います。健康相談の体制を整えたり、産業医と連携したりすることもあります。

    安全衛生教育

    有害作業従事前教育、特別教育、メンタルヘルス教育、リスクアセスメントの実施方法などを含んだ教育を企画します。教育計画の作成や講師・教材の準備などを行います。

    ※安全衛生教育については、下記の記事でも解説しています。
    雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育を実施して労働災害を防止しましょう!

    救急箱の点検

    職場巡視などで、消毒液や包帯などの使用期限が切れていないか、必要なものが揃っているか点検します。

    労働災害の原因調査・改善策の検討

    発生した疾病やケガについて、業務によって起こったものであるか調査を行い、作業環境や作業工程などを見直して改善策を検討します。

    ※なお、衛生管理者の業務については、過去の記事で詳しく解説しています。
    50人の壁押さえておきたい8つの衛生管理業務

    自社に必要なのは第一種?第二種?違いを理解!

    衛生管理者の資格には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者があります。選任できる業種と試験内容、合格率についてそれぞれ確認していきましょう。

    第一種衛生管理者について                                  

    ●選任できる業種

    全ての業種に対応することが可能で、有害業務との関連がある事業場でも選任できます。有害業務とは、危険な薬品を扱ったり、操作するうえで危険が伴う機械を扱ったりする業務です。労働者に危害や健康障害を及ぼす恐れがあり、労働災害のリスクが高い業務と言えます。

    有害業務と関連のある業種_第一種衛生管理者

    ただし、法定の有害業務の中でも一定の業務がある事業場では、衛生管理者のうちの一人を衛生工学衛生管理者免許所持者から選任する必要があります。

    ●試験内容

    第一種衛生管理者試験の試験科目は「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3つです。問題数は全部で44問あり、試験時間は3時間となっています。労働衛生と関係法令については、有害業務に関連する問題も含まれています。

    ●合格率

    令和4年度の第一種衛生管理者の合格率は、45.8%となっています。
    詳しくは安全衛生技術試験協会のWebページへ

    第二種衛生管理者について

    ●選任できる業種

    有害業務に関連のある業種に対応しておらず、その他の業種で選任できます。分かりやすく言うと、第一種衛生管理者が対応できる全ての業種から有害業務と関連する業種を除いた業種が、第二種衛生管理者を選任することが可能な業種と言えます。具体的には、金融業や保険業、情報通信業、卸売業などの有害業務と関連の少ない業種が挙げられます。

    ●試験内容

    第二種衛生管理者の試験科目は、第一種と同様に「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3つです。問題数は全部で30問あり、試験時間は3時間です。有害業務に関する問題が含まれないため、その分問題数が第一種衛生管理者より少なくなっています。

    ●合格率

    令和4年度の第二種衛生管理者の合格率は、51.4%となっています。

    詳しくは安全衛生技術試験協会のWebページへ

    第一種と第二種の違いをまとめると?

    第一種衛生管理者は有害業務と関連のある業種を含むすべての業種に対応することが可能のため、その分試験内容が難しく問題数も多くなっています。

    ここまでで衛生管理者の基本情報と第一種と第二種の違いについて確認しました。次の章では違いを踏まえて、第一種と第二種どちらの資格を取得するか判断するためのポイントをご説明します。

    あなたが狙うべき資格はどっち?選ぶポイント

    ここまで読んだ方の中には、「私の職場には有害業務がないから第二種衛生管理者で十分」と考えている方もいるのではないでしょうか。業種によって取得する資格を決める方法も一つですが、もう一つ資格を選ぶポイントがありますので確認しておきましょう。

    資格を選ぶポイント、 キャリアアップに活かせるのはどっち?

    資格を選ぶうえでぜひ考慮していただきたいもう一つのポイントは、キャリアアップに衛生管理者の資格を活用したいかどうかということです。衛生管理者の資格を活かしてキャリアアップしたいと考える場合には、第一種衛生管理者を取得することをお勧めします。

    第二種衛生管理者よりも第一種衛生管理者に資格手当を出している企業が多く、資格の取得を昇進要件としている企業もあります。有資格者の絶対数が少なく、50人以上を超える事業場では1人以上選任する必要がありますので、全ての業種に対応できる第一種衛生管理者は重宝されます。今後転職を考えている場合には、転職先の幅が広がるため、第一種衛生管理者を目指してはいかがでしょうか。

    早急に資格を取る必要があり、十分な勉強期間が取れない場合は?

    キャリアアップのために第一種衛生管理者を取得したいものの、勉強期間が十分に取れないために第二種衛生管理者を検討している方はいないでしょうか。

    衛生管理者は選任の事由が発生した日から14日以内に選任して、遅滞なく届け出を行う必要があり、社内に衛生管理者がいないために資格の取得を急かされているというケースは珍しくありません。その場合、衛生管理者の選任を猶予してもらうことで勉強期間を延ばせますので、社内で相談してみましょう。

    「衛生管理者の選任の特例」と言って、前任者の退職などによって新たな衛生管理者の選任に期間を要することがやむを得ないと認められる場合には、特定の人を代理にすることで概ね1年以内の期間猶予されます(安全衛生規則第8条)。第一種衛生管理者を取得するための勉強期間としては、余裕を持って4カ月、最低でも2カ月は集中して勉強できることが望ましいです。第一種衛生管理者を取得したい方は、勉強期間に余裕を持って臨むことをお勧めします。

    ※衛生管理者の選任特例に関してはこちらの記事でも紹介しています。
     衛生管理者が不在になってしまった!どうすればいいの?

    まとめ

    今回は、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違いと資格を選ぶポイントについてご説明しました。第一種と第二種の大きな違いは、有害業務と関連のある業種に対応することが可能かどうかというところにあります。選任できる業種が限られないため、第一種衛生管理者のほうがキャリアアップに活用できると言えるでしょう。どちらを受験するかは、職場の業種だけでなく、ぜひご自身の将来も含めて検討してみてください。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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