勤務間インターバルは健康管理に直結!―会社として何が必要?

勤務間インターバルとは何か、会社が何をすればよいのか詳しく解説します!

勤務間インターバル制度は、2019年4月1日から施行された制度です。勤務間インターバルを設けることで、健康の維持向上生産性の向上など、事業主・従業員の双方にメリットがあります。そもそも、勤務間インターバルとはどのようなものかをご存じでしょうか?

勤務間インターバル制度とは、始業時間から次の始業時間までの間、一定時間以上の休息時間を設ける制度です。労働者が健康な生活を送るため、睡眠時間プライベート時間を確保できる仕組みとなっています。十分なインターバル時間を確保することで、従業員の健康維持につながり、従業員が定着し、生産性が上がるなどのメリットがあり、企業の健康管理に直結します。

今回の記事では、勤務間インターバル制度が導入された背景や目的、考え方などについて、詳しく解説をしていきます。特に、制度導入の背景にある長時間労働と過労死の関係を通じて、勤務間インターバル制度が健康にとっていかに大事なのかを知っていただきたいです。そして最後に、会社として何をすべきなのかについても解説していきます。10分程度で読める内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。

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この記事でわかること(目次)
  • 勤務間インターバルとは何か、会社が何をすればよいのか詳しく解説します!
  • 勤務間インターバル制度とは?
  • 勤務間インターバル制度の導入背景
  • 勤務間インターバルを導入するメリット
  • 勤務間インターバルを導入するために会社が行うこと
  • まとめ
  • すべて表示 

    勤務間インターバル制度とは?

    勤務間インターバル制度とは、終業時間から次の始業時間までの間、一定時間以上の休息時間を設ける制度です。

    2018年6月29日に成立した働き方改革関連法では、労働基準法の改正により時間外労働の上限時間が法定される等、労働者の働き方に影響を及ぼす重要な改正がなされました。しかし、規制の方法が「労働時間の総量規制」であるため、”特定の日や期間”に労働時間が長くなった場合、十分な休息がとれないという事態を防ぐことができません。

    例えば、始業時間が7時の会社で、23時まで残業をしたとすると、インターバルの時間は8時間しかありません。8時間の間に会社から帰宅し、食事や入浴などを行うと、睡眠の時間が削られてしまいます。そのため、十分な休息時間を確保できるよう、労働時間等設定改善法により、終業時間から始業時間の勤務間にしっかりとインターバルを設けることが事業主の努力義務となりました。

    他の例としては、ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻前の勤務を認めないとすることで、インターバル時間を確保する方法もあります。

    近年は、フレックス制や裁量労働制など柔軟な労働時間制度を採用する企業が増えてきています。このような労働時間制度を利用すると、繁忙期など特定の時期に長時間労働になってしまうことや交替制勤務で勤務間隔の短いシフトで勤務しなければならないなど、十分な睡眠時間を確保できない状況が生まれやすい環境です。そのため、柔軟な労働時間制度だけでなく、勤務間インターバル制度も併用することで、十分なインターバル時間を確保することができます。

    勤務間インターバル制度の導入背景

    勤務間インターバル制度が導入された背景には、過労過労死が社会問題となり、深刻化したことが挙げられます。勤務間インターバル制度は過労死を防止する国の施策の1つでもあります。

    過労死とは

    過労死とは、業務における過重な負荷による脳・心臓・呼吸器疾患や、強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡や疾患のことを言います。

    長時間労働と過労死の関係

    過労死のリスクは労働時間と比例して高まっていきます。

    労災認定基準としても、時間外・休日労働時間が月45時間以内であればリスクは低いですが、月45時間を超えて長くなるほど、健康障害のリスクが高くなるため、長時間労働は過労死との関わり合いが強いと判断されています。また、月100時間を超えることや2~6カ月の平均で月80時間を超えると過労死のリスクは非常に高まるため、長時間労働は過労死との関わり合いが強いと評価されます。

    参考:厚生労働省「過労死等防止啓発パンフレット」

    過労死防止等に関連する国の目標

    過労死等防止に関して、国は目標を立てています。具体的には、労働環境メンタル政策の2つに大きく分けられます。

    まず、労働環境としては、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にすることや勤務間インターバル制度の認知度を上げること、年次有給休暇の取得率を70%以上にすることなどが挙げられています。

    メンタル政策としては、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にすることや仕事上の不安やストレスについて、相談先がある従業員の割合が90%以上であること、ストレスチェック結果の集団分析を活用した事業場の割合を60%以上にすることが挙げられています。

    このように、従業員の過労死防止の観点からも、勤務間インターバル時間を設けることは大切です。では、企業にとって勤務間インターバル制度を導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の章で確認していきましょう。

    勤務間インターバルを導入するメリット

    勤務間インターバル制度を実施することでメリットが3つあります。

    1. 従業員の健康の維持向上につながる
    2. 従業員の定着や確保が期待できる
    3. 生産性が向上する

    では、1つずつ見ていきましょう。

    1.従業員の健康の維持向上につながる

    1つ目は、従業員の健康の維持向上につながるということです。さまざまな研究※において、インターバル時間が短くなるにつれてストレス反応が高くなることが分かっています。特にインターバル時間が12時間を下回ると、起床時に疲労感が残ることが報告されています。

    ※参考資料
    厚生労働省『働く人々の健康を守る「勤務間インターバル制度」を導入しませんか』
    労働安全衛生総合研究所特別研究報告「勤務間インターバルと疲労回復に関する横断研究」2018
    日本統計学会誌「勤務間インターバルの状況とその健康状態に与える影響~社会生活基本調査ミクロデータによる分析~」2019

    2.従業員の定着や確保が期待できる

    インターバル時間を確保することにより、従業員のプライベート時間を確保することができるため、ワーク・ライフ・バランスが整います。労働人口が減少し、人材の確保が難しくなっている現代において、ワーク・ライフ・バランスのとれた企業は働きやすく、魅力的に感じる方が多いです。インターバル時間を確保することで、人材の確保や定着離職者の減少につながると言えます。

    3.生産性が向上する

    勤務間インターバル制度の導入により、ワーク・ライフ・バランスが整い、仕事とプライベートのメリハリがつきやすくなります。そのため、仕事への集中度が高まることが期待できます。集中力が高まることで、仕事の生産性や製品・サービスの品質向上につながります。

    以上のように、勤務間インターバル制度を導入することで、企業にも、従業員にもメリットがあります。導入することは、各企業の努力義務とされていますが、勤務間インターバル制度を導入することをお勧めします。次の章では、実際にどのようなステップで導入をしていけば良いのか具体的に説明をしていきます。

    勤務間インターバルを導入するために会社が行うこと

    勤務間インターバル制度を導入するために、会社がすべきことは、大きく4つのステップがあります。

    ステップ1.制度導入を検討する
    ステップ2.制度を設計する
    ステップ3.制度を導入・運用する
    ステップ4.制度内容・運用方法を見直す

    各項目について詳しく解説していきます。

    ステップ1:制度導入を検討する

    具体的に検討を始めていく前に、まずは労働時間等に関わる現状の把握課題の抽出を行います。現在、従業員がどのくらい働いているのか、実際に運用できそうなのかを把握する必要があります。また、経営層が積極的に関与する姿勢を明確にすることが重要なため、勤務間インターバル制度を導入する経営意義を確認し、導入の目的を設定していきます。

    ステップ2:制度を設計する

    制度の適用対象インターバル時間数などを具体的に設定していきます。ちなみに、厚労省ではインターバル時間を9~11時間以上の設置をすることをお勧めしています。

    理由としては、睡眠時間を7時間は確保することが望ましく、通勤に片道1時間程度かかることが多いことが挙げられます。また、制度の根拠の規程となる就業規則や労働協約の締結なども整備していきます。

    ステップ3:制度を導入・運用する

    制度の設計ができたら、従業員の方々に制度内容等を周知します。顧客や取引先にも制度を導入したこと等を説明することで、インターバル時間を確保しやすい環境づくりを進めていくと良いでしょう。

    ステップ4:制度内容・運用方法を見直す

    実際に制度を導入した後に、効果検証や課題等の洗い出しを行います。課題が明らかになった場合、ステップ2に戻り、制度内容・運用方法の見直しを行っていきます。

    まとめ

    勤務間インターバル制度の導入は会社の努力義務のため、実施しなくても罰則はありません。しかし、勤務間インターバルは従業員の健康やワーク・ライフ・バランス、生産性が上がるなど、会社・従業員の双方にメリットがあります。

    そのため、特に「従業員に健康に気持ちよく働いてほしい」、「離職が多くて従業員がなかなか定着しなくて困っている」というような会社では導入を検討してみることもお勧めです。導入するには、制度を設計することも大事ですが、制度を作っただけにならないよう、関係者に周知を行い、インターバル時間を確保しやすい環境を整えていきましょう。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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