どうしたら良いの?ストレスチェック、面談希望のない高ストレス者への対応

どうしたら良いの?ストレスチェック、面談希望のない高ストレス者への対応-エリクシア産業保健コラム

一定数いる面談希望のない高ストレス者

エリクシアでは、ストレスチェックを実施する会社から、「面談を希望しない高ストレス者をどうしたら良いか?」というご相談を毎年いただきます。会社によって割合は変化しますが、高ストレス者のうち面談を希望する従業員は多くても10%ほど※と言われています。残りの大半が「面談を希望しない高ストレス者」に当たりますが、面談を希望しない場合、会社が把握することはできません。そうは言っても、正体が分からない高ストレス者を放置してよいのでしょうか。本記事では、ストレスチェックを実施する会社であれば経験するそんなお悩みについて解説していきます。

※参考:ストレスチェック制度の実施状況および課題に関する調査報告(産業衛生研究会)より引用

ストレスチェックに関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 一定数いる面談希望のない高ストレス者
  • そもそもストレスチェックでできることは?
  • どうする?高ストレス者へのアプローチ
  • まとめ
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    そもそもストレスチェックでできることは?

    高ストレス者が誰なのか分からないことでモヤモヤする原因として、ストレスチェックに期待しすぎている部分があるのかもしれません。ストレスチェックでできることを確認する前に、前提として「3つの予防」の考え方を確認しておきましょう。職場におけるメンタルヘルス対策は、下記の「一次予防」「二次予防」「三次予防」に分けることができます。

    一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止
    →社員によるセルフケア、管理監督者によるラインケア、ストレスチェック
     職場環境改善など
    二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応
    →定期健康診断、相談窓口、長時間労働者の面談等
    三次予防:職場復帰の支援
    →メンタルヘルス不調者の職場復帰支援等

    近年、労働者が安全で健康に働くことができるよう、企業に求められる「安全配慮義務」の範囲が拡大してきていることもあり、これらの予防の視点が注目されています。

    職場のメンタルヘルス対策についてもっと詳しく知りたい方はこちら
    これだけは知っておきたい!職場のメンタルヘルス対策はじめの一歩ーエリクシア産業保健コラム

    厚生労働省によると、ストレスチェックは労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を主な目的としているため、3つの予防の中でも一次予防のための仕組みとして位置づけられています。もしも、「ストレスチェックで高ストレス者を全員把握して、一人一人に何かしらの対応を行いたい」と考えているのであれば、それは二次予防(早期発見)にあたります。モヤモヤする原因は、一次予防(未然防止)の仕組みであるストレスチェックに二次予防(早期発見)の役割までを期待しているからかもしれません。

    そもそも、高ストレス者が自ら会社に結果を開示したり、面談を希望したりしない限り会社は把握できません。ストレスチェック制度の情報管理の制約からして、二次予防である早期発見の役割を果たすことは難しいのです。

    ストレスチェックの基本については、下記の記事で詳しくご説明しています。
    50人を超えたら実施義務発生、ストレスチェック基本のきーエリクシア産業保健コラム

    どうする?高ストレス者へのアプローチ

    ストレスチェック制度で不調者の早期発見をすることは期待できないことをご説明しました。それでも、高ストレス者の中に不調者がいる可能性があるのも事実で、正体が分からなくても何とかアプローチしたいと考える人事の方は少なくありません。そんな人事の方からいただく3つのご相談について解説していきます。

    面談希望のない高ストレス者を放置したら安全配慮義務違反になる?

    高ストレス者が自分から会社に結果を開示したり、面談を希望したりしない限り、会社は高ストレス者が誰なのかを知ることができません。それでも、高ストレス者の中に不調者がいる可能性を考えると、会社として何の対応もしないことは安全配慮義務の観点から問題はないのでしょうか。

    厚生労働省が出している「ストレスチェック制度関係Q&A:Q21-2」によると、安全配慮義務については民事上の問題となるため、行政から解釈や考え方を示すことはできないとしつつも、次のように述べています。

    ストレスチェックの結果は、労働者本人の同意がない限りは実施者(産業医)にとどまり、事業者に提供されないということは、労働安全衛生法の規定するところであり、労働者の同意を得られず、産業医が知っているストレスチェックの結果が事業者に伝わらず、その結果就業上の措置が講じられなかったとしても、産業医個人の責任が問われるような性格のものではありません

    参考:厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」 21安全配慮義務等 Q21-2

    このように、個人結果を知っている実施者(産業医)が責任を問われないとされており、結果を把握できない会社が措置を講じられなかったからと言って責任を問われることはなさそうです。つまり、面談希望のない高ストレス者への対応を行わなくても安全配慮義務違反にはならないと考えられます。

    高ストレス者が面談を希望しない場合どうする?

    先ほど、面談希望のない高ストレス者の対応をしなくても、安全配慮義務違反にはならないことをご説明しました。そのため、高ストレス者が面談を希望しない場合は、無理やり高ストレス者を見つけ出して面談を実施しなくても問題はありません。ただし、高ストレス者が誰なのか把握できないからと言って、メンタルヘルスに関する企業の安全配慮義務が一切なくなるわけではない点にはご注意ください。

    ストレスチェック制度の範囲で対応するには限界があるため、その他の産業保健活動の中で従業員の精神状態をフォローしていく必要があります。例えば、ストレスチェックの結果を活用するなら、高ストレス者の多い部署の管理職に注意を呼びかけ、管理職から見て不調が疑われる人に面談勧奨することも一案です。ストレスチェックを利用せずとも、普段から従業員が産業医面談や相談窓口を利用しやすい環境を整えることが大切です。一度社内のサポート資源を見直し、強化することを検討すると良いでしょう。

    産業医が高ストレス者をピックアップして面談すればよいのでは?

    産業医が実施者または共同実施者の場合は、高ストレス者が誰なのかを把握できます。そのため、産業医が高ストレス者をピックアップして面談する方法について、人事の方からご相談いただくことは少なくありません。なお、厚生労働省が出しているストレスチェック指針によると、「ストレスチェックの結果+面談の結果」から高ストレス者を選定する方法も考えられるとされているため、ピックアップして面談を実施すること自体は可能です。

    参考:「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(ストレスチェック指針)」P6-7

    ただし、「ストレスチェックを意味のあるものにしたい」と考えるのであれば、あまりお勧めできません。弊社顧客ではありませんが、実際に産業医が高ストレス者のピックアップを行った会社が過去にいくつかあります。それらの会社はすべて、翌年の受検率の低下および高ストレス者の不自然な大幅低下という結果になり、ストレスチェック自体が形骸化してしまいました。

    ストレスチェックの形骸化につながった理由は、従業員の目線に立って考えると分かると思います。高ストレス者が面談や開示を希望していないにも関わらず、ストレスチェック後に会社から面談のお知らせが来たらどう思うでしょうか。

    会社に結果を把握されている

    高ストレス者になったら産業医面談をさせられる

    きっとこのように、不信に感じるのではないでしょうか。従業員同士でうわさが広がれば、会社やストレスチェックに対して不信感を抱くことが予想されます。一度きりのストレスチェックであれば良いのですが、来年以降も継続して実施する場合には、お勧めできない方法です。

    ストレスチェック結果表の作成や提出方法について解説している記事もあります。
    初心者でも安心!ストレスチェック結果報告書の作成から提出までーエリクシア産業保健コラム

    まとめ

    ストレスチェックは機微な情報を取り扱うため、高ストレス者への対応は慎重に行う必要があります。特に面談希望のない高ストレス者に対して、結果の開示や面談を強制することは悪手にあたります。ストレスチェック制度からのアプローチには限界があるため、正体が分からない高ストレス者を何とかしたい場合は、ストレスチェックと並行して会社のメンタルヘルス対策を強化していきましょう。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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