定期健康診断で会社が行う7つのこととは?定期健康診断を徹底解説!

定期健康診断で会社が行う7つのこととは?定期健康診断を徹底解説!ーエリクシア産業医

定期健康診断を実施する際に会社が行うべき7つのこと

労働安全衛生法では、会社が労働者に対して必要な健康診断を実施することを義務付けています。会社が実施しなければいけない健康診断は下記の通りです。
※はすべての会社で必須の健康診断です

本記事をご覧になっている方の中には、初めて健康診断の実施担当になり具体的に会社で何をしなければいけないのかと戸惑っている方もいるかと思います。健康診断は、会社対応が法令で定められている内容も多いため、漏れなく確実に対応する必要があります。

今回は年に一回必ず会社で行う恒例行事の1つである『定期健康診断』をピックアップし、基本の対応から意外と悩むポイントについて分かりやすく解説していきます。

なお、定期健康診断と同じく全ての会社で実施することが必須な「雇入時の健康診断」については、別の記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

会社が知っておくべき!「雇入時健康診断」の基本のき

健康診断管理に関する課題はエリクシアで解決!
この記事でわかること(目次)
  • 定期健康診断を実施する際に会社が行うべき7つのこと
  • 定期健康診断実施のキホン
  • 定期健康診断で会社が行うべき7つのこと
  • 意外と悩む!?定期健康診断Q&A
  • まとめ
  • 健康診断管理に関する課題はエリクシアで解決!
  • すべて表示 

    定期健康診断実施のキホン

    まずは、定期健康診断について押さえておきたい基本の対応から確認していきます。知っていることも多いかもしれませんが、今一度おさらいも兼ねて振り返ってみましょう。

    1年に1回、必ず実施しましょう

    労働安全衛生法で、定期健康診断は業務内容に関わらず、全ての会社に実施することが定められています。会社には健康診断を実施する義務がありますが、労働者側にも健康診断を受けることが義務付けられています。もし会社が定期健康診断を実施しないと、法律違反となり、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。また、健康診断を実施せずに健康被害が出てしまった場合、安全配慮義務違反に問われてしまう可能性もあるため、必ず実施しましょう。

    法定項目が決まっています

    定期健康診断の検査項目が、実は法律で決まっている(法定項目)ことはご存じでしょうか。法定項目は下記の項目です。

    定期健康診断の法定項目(安衛則第44条)

    1. 既往歴および業務歴
    2. 自覚症状および他覚症状の有無
    3. 身長(★)体重、腹囲(★)、視力および聴力
    4. 胸部エックス線(★)および喀痰(★)
    5. 血圧
    6. 貧血[血色素量および赤血球数](★)
    7. 肝機能[GOT、GPT、γ-GTP](★)
    8. 血中脂質[LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド](★)
    9. 血糖(★)
    10. 尿糖および尿蛋白
    11. 心電図(★)

    上の表の法定項目のうち、★印がついている下記項目は医師が必要でないと認める場合は省略できる、とされています。

    定期健康診断の法定項目のうち、医師が必要でないと認める場合に省略できる項目

    「省略できる」と書いてあるので、時間やコスト削減を考えると省略したくなってしまうかもしれません。が、その前に『医師が必要でないと認める』という文言がついています。『医師が必要でないと認める』とは、その人の自覚症状や客観的な所見、これまでかかったことがある病気などを踏まえて、医師が本当に必要ないか判断することを言います。ずっと担当してきたかかりつけ医でもない限り、1人1人の労働者について省略可と判断するのは難しいのが実情です。また、年齢等により機械的に省略するものでもなく、労働者ごとに省略の有無を管理するのは大変なので基本的には実施する形が望ましいでしょう。

    健診結果を産業医に確認依頼しましょう

    あなたの会社では、健診結果を会社で回収した後どうしているでしょうか。回収して終わりになっていませんか?会社で定期健康診断を実施する目的は、労働者の健康状態を把握し、必要な労働者に対して労働時間の短縮、作業転換などの事後措置を行い、脳 ・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図るためです。

    しかし、どの労働者が会社として措置を講じる必要があるのか、なかなか分からないものです。そのため、安衛法では、「健康診断の項目に異常所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置に関して、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければならない」としています。この「医師」は産業医がおすすめです。その理由は、産業医は会社の労働環境や就業状況を熟知しており、労働者が健康に働ける状態なのか判定するプロであるからです。

    また、「健康診断の項目に異常所見のある労働者」を判定するには、健康診断の項目を熟知しつつ、項目同士の関連性やその影響など高度な医療知識を必要とします。そのため、基本的には健康診断を受けた労働者全員分を産業医に判定してもらうようにしましょう。判定を依頼する期日として、健康診断が行われた日もしくは労働者が健康診断結果を会社に提出した日から3カ月以内に行うよう労働安全衛生規則で定められていますので、速やかに産業医による確認を依頼しましょう。

    従業員50人未満で産業医選任義務がない会社はどのように確認を依頼すればいいのでしょうか。産業医に確認を依頼する方法としては大きく2つあります。

    方法1 産業保健総合支援センター(地域産業保健センター)を活用する

    地域産業保健センターは、労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く人を対象に、労働安全衛生法で定められた産業保健サービスを無料で提供している機関です。お近くの地域産業保健センターに相談してみてもいいでしょう。
    お近くの地域産業保健センターは下記からお調べください。
    独立行政法人労働者健康安全機構のページ

    方法2 産業医に単発で依頼する

    産業医サービスを提供している会社や健康診断を行う機関で産業医を紹介してもらったり、知り合いの産業医に依頼するなど、単発で健診結果の確認をしてもらえないか確認してみるのも1つの方法です。

    定期健康診断で会社が行うべき7つのこと

    次に、定期健康診断にあたって会社は具体的に何を行う必要があるのか、詳しく解説していきます。会社がすべきことは全部で7つあるため、自社で確実に実施できているか確認していきましょう。

    1:定期健康診断の実施

    前述の通り、従業員数に関わらず全ての会社に年1回定期健康診断を実施する義務が課されています。もし実施しなかった場合、法令で処罰される可能性もあるので、確実に実施するようにしましょう。

    2:健診結果を労働者へ通知

    安衛法にて、会社は健診結果を労働者へ通知するよう明記されています。健診機関から会社へ健診結果が届いた場合は必ず結果を労働者へ通知するようにしましょう。

    3:健診結果の保管

    健診結果は定められた期間保管することが義務付けられています。健康診断の種類によって保管期間は異なりますが、定期健康診断の結果は5年間保管する必要があります。保管の方法は、紙形式でもデータ形式でもどちらでも大丈夫です。

    4:健診結果について医師からの意見聴取

    前述しましたが、定期健康診断は受診して終わり、ではなく結果を産業医に確認依頼し意見をもらうようにしましょう。

    産業医が健診結果を確認する際は『医療判定』と『就業判定』の2つの判定を行います。『医療判定』とは、「受診して精査や治療した方がいいか」という判定で、『就業判定』とは「今の業務内容で就業継続して問題ないか」という判定です。

    一般的に、健診機関からもらう健診結果はやや厳しめに判定が出ることが多く、「健診結果に再検査・要受診と記載があったので病院に行ったが問題なかった」、というパターンも少なくありません。それに対して、産業医は「今の健康状態で問題なく働けるか」という視点でも結果を確認しているため、産業医が受診指示や就業制限をかける場合は、本当に心配な健康状態のことが多いです。産業医から受診指示が出た場合、確実に受診をさせるようにしましょう。

    5:健診実施後の事後措置対応

    会社は産業医の意見を聴取したら、再受診が必要な労働者に対して確実に受診勧奨を行いましょう。また、再受診までの一定期間や再受診の結果によっては該当労働者に対して作業の転換や労働時間短縮などの措置を講じなければいけません。もし措置を講じずに放置し、健康状態が悪化して何か起こってしまった場合、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。必ず事後措置対応を実施するようにしましょう。

    6:健診結果に基づく保健指導

    安衛法にて、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対して、医師や保健師による保健指導を行うよう努力義務が課せられています。該当の労働者には保健指導の機会を用意するようにしましょう。

    7:労基署へ定期健康診断結果報告書の提出

    定期健康診断結果報告書の提出義務があるのは、常時50人以上の労働者を雇用する事業場ですが、50人未満の事業場も提出することは問題ありません。結果報告書は厚労省指定のフォーマットがありますのでダウンロードして、必要事項を記載し提出するようにしましょう。提出は最低年1回必須ですが、労基署による過去の指導ケースから、4月~12月末までの実施分を一旦集計して翌年の2月に「第1回報告」として提出。その後1月~3月末分の結果が回収されたら、4月~翌3月分までの合算を5月までに「第2回(最終)報告」として提出することをおすすめします。2月と5月に2回提出と覚えておきましょう。

    定期健康診断結果報告書の様式は厚労省のホームページからダウンロードください

    意外と悩む!?定期健康診断Q&A

    ここまで、定期健康診断実施にあたって会社がすべきことを解説してきました。最後に弊社によく相談が寄せられる、健診担当者が意外と悩む疑問について回答を紹介します。

    Q1 健診の料金は誰が負担しますか?

    法定項目は全額会社が負担するよう義務付けられています。法定項目以外のオプションで実施した検査については、会社が負担する義務はありませんが、上限を決めて会社が補助することが多いです。なお、会社が特定の健診プランや検査項目の受診を指示した場合は会社負担が一般的です。

    Q2 産業医から再受診を指示された際の費用は誰が負担しますか?

    再受診に係る費用については、会社が負担する義務はないため、労働者の自己負担としても問題はありません。しかし、自己負担だと受診しない人もいるため会社負担の方が受診率は上がる傾向にあります。

    Q3 未受診者へはどのようにアプローチすればいいですか?

    健診を受診しない理由で一番多いのが「健診に行く時間がないため」です。業務が忙しいと、健診に行きたくても時間を確保することが難しいという労働者もいるため、会社で勤務時間内に受診できるよう、時間や業務量の調整を行いましょう。また、受診するように何度も促したのになかなか受診しない人に対しては、書面や口頭で何度かアプローチして記録を残していくことで万が一に備えることが大事です。就業規則の中に健診を受診しない場合の扱いを明記して、強めにアプローチすることも一案です。

    まとめ

    今回は定期健康診断について解説してきましたが、自社の内容を思い浮かべながら確認いただけたでしょうか。最後に、今回のポイントをまとめておきます。

    ・定期健康診断は年に1回必ず実施する義務があります。
    ・健康診断は受けて終わり、ではなく結果を産業医に確認してもらいましょう。
    ・産業医は『医療判定』と『就業判定』の2つを行い、労働者が今の業務を続けても問題ない健康状態なのかを判定します。
    ・産業医からのコメントを基に、事後措置の対象となる労働者には確実に事後措置対応をしましょう。
    ・従業員50人以上の会社は定期健康診断結果報告書を管轄の労基署へ必ず提出しましょう。

    この機会に、ぜひ自社の健康診断を見直してみてください。

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    この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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    この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

    株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

    【記事の監修】
    産業医 上村紀夫
    産業医  先山慧

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    https://www.elixia.co.jp/contact/

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