健康診断の「事後措置」―人事が忘れがちな3つの対応とは? 2025/07/17 2025/08/01 健康管理 健康診断後の対応が企業の健康経営を左右する 毎年実施される定期健康診断。受診を促し、結果を回収しただけで終わっていませんか?健康診断は「実施して終わり」ではなく、結果を踏まえた事後措置が重要です。 この記事では、人事が見落としがちな健康診断後の対応(事後措置)について解説し、対応漏れを防ぐためのポイントを紹介します。事後措置を適切に行うことで、従業員の健康リスクの早期発見や労務トラブル防止につながります。 健康診断は、従業員の健康状態を把握し、必要な就業配慮や治療促進につなげるための重要な機会です。そのためには、健康診断後の「事後措置」がカギです。健康診断後に求められる事後措置とは、医師の意見聴取、就業上の措置、保健指導(医師または保健師による指導)など、従業員の健康状態に応じた対応を適切に進めることです。事後措置が不十分だと、労基署からの是正勧告や労務トラブル、従業員の健康悪化に発展するリスクも考えられます 今回の記事では、多忙な人事担当者が見落としがちな「事後措置対応」にフォーカスし、忘れがちな3つの重要な対応について解説します。 ✅ 健診後の“事後措置”、スムーズに進めるためのポイントとは?「うちの対応、これで合ってるのかな…」と感じたときに使える『健診事後措置ガイド&チェックリスト』をご用意しました。対応の流れや社内の体制を“整理・確認”するのに役立つ内容です。→ 無料ダウンロードはこちら この記事でわかること(目次)健康診断後の対応が企業の健康経営を左右する事後措置の対応漏れが起きやすい重要な3つの対応とその進め方を解説1医師の意見聴取(就業判定)と記録2就業上の措置の検討とフォローアップの実施3医師または保健師による保健指導の実施事後措置への対応力を高めるための社内体制強化産業医と定期的に連携できる体制実務を整理するチェックリストと記録整備衛生委員会での報告・議論の場を活用事後措置を支援する外部サービスとは1産業医連携・面談支援サービス2健康診断後の対応をサポートする健康管理システム3保健師による実務支援4就業措置に関する専門的な相談支援まとめ:仕組み化で対応漏れをなくしていく健康診断に関する課題はエリクシアで解決!すべて表示 事後措置の対応漏れが起きやすい重要な3つの対応とその進め方を解説 この章では、健康診断後の人事対応として必ず押さえておきたい3つのポイントを解説します。実務上、特に重要で対応漏れが起きやすいのは「医師の意見聴取」、「就業上の措置」、「保健指導の実施」です。それぞれ進め方や注意点を具体的に説明します。 1医師の意見聴取(就業判定)と記録 医師の意見聴取とは? 健康診断の結果、異常所見がある社員について、就業上の措置について3カ月以内に医師の意見を聴かなければなりません (労働安全衛生規則第51条の2の1) 。必要があると認めるときは、従業員の事情を考慮して残業禁止や出張の制限、就業場所の変更などの措置を行います。(労働安全衛生法第66条の4、5)企業は従業員の健康状態を把握し、必要な措置を講じることが求められており、医師の意見聴取はその重要な一環です。ここで意見聴取を怠ると、従業員の健康問題が悪化するリスクが高まり、その結果として、労災や損害賠償につながってしまう可能性もあります。 記録として残す重要性 医師の意見は「通常勤務可能」「注意を要するが勤務可」「制限付き勤務」「就業不可」などといった形で区分されます。企業はこの判定を参考に、従業員の健康管理を適切に行うことが求められます。 また、医師の意見は、健康診断個人票とともに5年間保存することが推奨されます。近年は、電子ファイルで一元管理を進めて業務効率化やコスト削減、セキュリティ強化をする企業が増えています。必要な情報を素早く検索できるので、労基署対応やトラブルがあった時に証拠として提示しやすいというメリットもあります。 2就業上の措置の検討とフォローアップの実施 医師からの意見に基づいて、企業は勤務条件の変更を行います。例えば、深夜勤務の制限や長時間労働の禁止、軽作業への一時配置転換などです。しかし、意見は得たものの、現場で対応が行われていないケースも珍しくありません。そのため人事と現場が連携し、産業医の意見が実際に反映されているかをチェックする仕組みも重要です。 また、措置を講じた後のフォローアップも大切です。1~3カ月後に産業医がフォローアップ面談を行うなど、定期的な確認で健康リスクの悪化や再発防止につなげましょう。 3医師または保健師による保健指導の実施 健康診断で有所見となった従業員に対しては、まず事業者が「受診勧奨(努力義務)」を行い、必要な再受診や治療につなげることが重要です。 しかし、受診を促すだけでは「受けっぱなし」の状態になりやすく、実効性に欠ける場合があります。そのため、再受診の有無や生活習慣の課題をふまえて、医師または保健師による「保健指導」を行い、状況に応じた継続的な支援を検討することが効果的です。保健指導の一環として、産業医や保健師による面談や健康相談を実施する場合もあります。面談を行う際は、対象者や目的を明確にし、記録を残すことで支援の継続性と対応の抜け漏れ防止につながります。 これまで、健康診断後に必要な3つの対応について実務視点で整理してきました。いずれの対応も人事単独では完結できず、産業医や現場と連携して進めていく必要があります。次の章では、こうした対応を円滑かつ漏れなく進めるために必要な「社内体制づくり」について、解説していきます。 事後措置への対応力を高めるための社内体制強化 事後措置の対応漏れや属人化リスクを最小限にするためには、社内体制を強化することが重要です。業務を仕組化し、産業医との連携を強化することで、継続的かつ組織的な健康管理を実現できます。 産業医と定期的に連携できる体制 産業医は単に「配置する」だけではなく「活用する」視点が大事です。日ごろから相談しやすく、健康診断管理に積極的に関与する産業医がいるだけで健康診断の事後措置の対応漏れのリスクは下がります。産業医との関係性を築くためには、定期的なミーティングを人事と産業医の間で開催することや衛生委員会への積極的な参加を定例業務にすることなどが挙げられます。 実務を整理するチェックリストと記録整備 フローを整理し、テンプレート化しておくことで抜け漏れを防ぎ、もしも担当者が変わっても、対応をしっかりと行えるようになります。例として以下のテンプレート化をおすすめします。 医師の意見聴取記録シート産業医面談・健康相談面談の記録台帳事後措置対象者と対応内容のチェックリスト これらはクラウドツールやExcelで整理・保管しておくことで対応漏れを防ぐことができます。 衛生委員会での報告・議論の場を活用 健診を担当する人事部門だけでなく、経営層や他部門にも情報を共有することで、組織全体で健康課題に向き合う姿勢が生まれます。結果として、職場環境の改善や業務体制の見直しなどにつながり、より実効性の高い事後措置を継続的に行いやすくなります。 ここまで事後措置の対応漏れや属人化リスクを最小限にするための社内体制の整備について解説してきました。社内体制の整備は、人事の負担軽減や従業員の健康維持につながり、企業としての安全配慮義務に適切に対応できるようになります。とはいえ、社内のリソースには限りがあります。次の章では、事後措置を支援する外部サービスについて紹介します。 ※健康診断後に誰が何をやるのか、人事と産業医の役割と具体的なタスクについては下記の記事で解説しています。 健康診断を受けっぱなしにしていませんか?企業と産業医に求められる対応 事後措置を支援する外部サービスとは 社内体制の整備することに加えて外部の専門サービスを活用することも対応漏れや遅れを防ぐために役立ちます。どんな種類があるのか見ていきましょう。 1産業医連携・面談支援サービス 産業医サービス会社や面談支援サービスは、健診結果に基づいた医師の意見聴取や産業医面談の実施サポートで人事担当者の負担を軽減します。産業保健業務で人事が使用する資料のフォーマットや衛生委員会のトピックの提供や産業医がすぐに対応できないときに相談できる窓口を持つなどのサービスもあります。 2健康診断後の対応をサポートする健康管理システム 健康管理システムなどのクラウド型システムでは、健診結果との連携や面談対象者の自動抽出、意見記録、フォロー状況の可視化ができるなど様々な機能があります。タスクチェックや記録管理をシステム上で行うことで属人化を防ぎやすくなります。 3保健師による実務支援 健診の再受診の督促や健康相談への対応など、医師の介入が不要な領域で保健師がサポートを行います。場合によっては、記録整理や衛生委員会の資料作成など実務的な支援を行うこともあります。 4就業措置に関する専門的な相談支援 「就業不可」や「制限付き勤務」などの判断を受けた際、適切な労務対応や就業措置を検討するため、労務の専門家によるアドバイスを提供するサービスがあります。具体的には社労士や弁護士などの労務顧問や専門コンサルティング会社などが挙げられます。 外部サービスを活用すれば、人的リソースが限られていても、法令対応と実務遂行がスムーズになり、対応の質を高め、リスクを軽減できます。また、人手不足だけでなく、経験面でも社内の制約を補うことが可能になり、対応の漏れやばらつきを防ぐことにつながります。従業員への安心感や信頼にもつながるため、外部サービスについて積極的な検討をしていくのも一案です。 ✅ 健診後の“事後措置”、スムーズに進めるためのポイントとは?「うちの対応、これで合ってるのかな…」と感じたときに使える『健診事後措置ガイド&チェックリスト』をご用意しました。対応の流れや社内の体制を“整理・確認”するのに役立つ内容です。→ 無料ダウンロードはこちら まとめ:仕組み化で対応漏れをなくしていく 健康診断は実施だけで終わることなく、医師の意見聴取、就業措置、産業医面談などの事後措置をしっかりと実行することが大切です。 特に人事担当者は多忙かつ幅広い業務を抱えているため、すべての対応を個人の努力に頼るには限界があります。業務を仕組化し、チェックリストや記録台帳でプロセスを標準化しつつ、産業医との連携も深めて、対応漏れを防ぎ、健康管理体制の質を向上させましょう。 健康診断に関する課題はエリクシアで解決! エリクシアでは単なる産業医の配置にとどまらない、健康診断後の事後措置のサポートを含めた企業の産業保健制度全体を支援するサービスを提供しています。 ・自社で育成した信頼できる産業医 ・健康診断の事後措置に対する実務支援 ・人事労務部門との連携強化や相談対応 特に「産業医はいるけれど、活用できていない」「健康診断後の対応が属人化している」という企業様に多くのご好評をいただいています。 人事部門など本部主導の健康管理体制づくりをお考えの際はぜひ一度ご相談ください。 無料相談はこちらから
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